そもそも食中毒を起こす細菌の生育条件は三つあります。一つ目は栄養、二つ目は水分、そして三つめは適度な温度です。この三条件が揃うと細菌は倍倍と分裂して大量に増殖してしまいます。
逆に言えばこの三条件のうち一つでもコントロールすれば、細菌の増殖を抑えることができます。食肉のように栄養も水分も豊富な食材は、冷蔵や冷凍で流通・保管することで、この三条件のうちの一つである「適度な温度」をコントロールし、細菌の増殖を抑えています。
食品衛生法において食肉製品は主に細菌を制御する観点から次の四つに分類されています。すなわち、加熱食肉製品(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)、特定加熱食肉製品(ローストビーフなど)、非加熱食肉製品(生ハムなど)、乾燥食肉製品(ビーフジャーキーなど)の四つです。
ベーコンのような加熱食肉製品は、中心部を63℃で30分以上加熱し、冷却することで「適度な温度」をコントロールして細菌の増殖を抑えています。生ハムのような非加熱食肉製品は、食塩などを添加して塩せきし、くん煙または乾燥などの工程を経て、水分活性を0.95未満などに下げ、微生物が生育に利用できる「自由水」を排除することによって「水分」をコントロールし、細菌の増殖を抑えています。
そのため、生ハムは一度も加熱されていないのにそのまま食べることができるのです。
注1)無塩せきソーセージなど一部の商品について、より美味しく食べていただくためなどの理由から、メーカーが加熱を推奨する場合があります。
注2)生ウィンナーのように調味だけされて未加熱の商品については、「食肉製品」ではなく「食肉加工品」と表示されており、必ず加熱調理が必要です。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁