[論説]加速する耕作農地減 多様な人材の確保急げ
同省の試算は11月、新たな食料・農業・農村基本計画を検討する審議会に示した。近年の増減ペースや直近の年齢構成を基に、30年時点の経営体数を予測。経営体は54万まで落ち込み、20年の108万から半減するとした。
これを基に30年時点でどのくらいの農地が耕作されているかを算出すると、20年と比べて92万ヘクタールの農地が耕作されなくなる見通し。現在の国内農地(約429万ヘクタール)の2割に相当し、これが現実となれば、食料安全保障を大きく脅かす事態となる。
耕作面積の縮小をいかに食い止めるか。同省は農地の集約化や作業の機械化などを課題に挙げる。規模を拡大し、機械化を進めることで、担い手がより少ない時間で効率的に作業ができるようにするのが狙いだ。政府の24年度補正予算案でも、農業分野の柱として農地の大区画化支援を盛り込んだ。来春に策定する新たな基本計画では、品目ごとの経営体数や経営規模の目標を新たに設ける方針だ。
ただ、規模拡大と機械化を進めたとしても、今の担い手だけで農地を維持するのは限界がある。欠かせないのが多様な農業者の確保だ。23年の農業経営体のうち、個人経営体の割合は96%と大半を占める。規模別に見ると経営耕地面積1ヘクタール未満の農業経営体の割合は52%。家族農業や女性、移住者など多様な人材なくして耕作面積の維持は難しく、農村も活性化しない。改正食料・農業・農村基本法でも多様な農業人材の確保を重視する方針を打ち出している。
多様な農業人材の確保に向けて求められるのは、家族経営協定の推進をはじめ、誰もが働きやすい環境づくりにある。なにより重要なのは、経営安定に向けた政府支援だ。生産資材価格が高騰する中、農家経営は厳しさが増し、廃業も増えている。日本農業新聞が全国116の集落営農組織や農業法人を対象にした景況感調査では、生産資材価格や人件費の上昇が経営に影響があるとした回答は98%に達した。農家の所得確保は喫緊のテーマとなる。
国会では与野党による議論が始まった。国民民主党は直接支払い創設を提起、自民党の森山裕幹事長も「食料安全保障の強化に向けた直接支払いの見直しが必要」との考えを表明した。担い手の確保に向け、手取り増につながる直接支払いを急いでほしい。