[論説]介護職員の減少 多様な人材で支えよう
厚生労働省によると、2023年度の介護職員数は212万6000人で、22年度から2万9000人減った。介護保険制度が始まった2000年度以来、初めて減少に転じた。他産業に比べて賃金水準が低いことなどが背景にある。介護人材の採用に向けて同省は賃上げを進めるが、他産業も同様に賃上げ傾向にあり、追い付かない。
同省は介護職員の必要数を26年度は240万人、高齢者数がピークとなる40年度は272万人と試算する。今後、職員の減少が続けば、必要数はとても満たせない。一層の賃上げを含め、介護ロボット導入による労力軽減や、デジタル化による業務の効率化などを進めて処遇改善を加速し、人員を拡充するべきだ。
外国人材の受け入れも進んでいる。介護福祉士を養成する専門学校や大学に昨年4月、入学した留学生は3054人と過去最多となった。介護の新たな担い手として期待がかかる。まずは誰もが働きやすい環境整備が必要だ。
福井県は昨年、ミャンマー人の介護技能実習生の受け入れに向けて、現地に「福井クラス」を設置した。入国前に、日本語や介護技術の教育に加えて同県の風土や方言なども指導する。入国後、同県で安心して暮らし、長く活躍できる人材育成につなげる。こうした細やかな配慮こそ、外国人から実習先として選ばれる要素となり得るだろう。
JAも動き始めている。三重県のJA伊勢みのりデイサービスは昨年、介護現場で働く外国人技能実習生2人を採用した。単位JAでは珍しい取り組みで、外国人材の活躍の場を広げ、やりがいを持って技術を学び、質を高められるよう、手厚いサポートを心がけたい。
ボランティアの力も借りたい。JA助けあい組織や女性組織は介護施設でレクリエーションや、傾聴ボランティアなど多彩に活動している。介護サービスを施設職員だけで担わず、JAならではの“つながる力”を生かせば、より良いサービスが提供できる。
介護が必要な人のニーズはさまざまだ。身体的介助を求めている人もいれば、関心を持って話を聞いてほしい人もいる。さまざまなニーズには、多様な人材が関わることが大切だ。立場や年齢も違う人が互いに支え合うことで、誰もが安心して暮らせる高齢社会をつくっていこう。