[論説]JAの人材育成 若手、女性の声 大切に
「令和の米騒動」をはじめ食品の価格高騰が相次ぐ中で、食卓と農場をつなぐJAの役割はますます重要となる。だが、JAの未来を担う人材をどう育成するかが、大きな課題となっている。若い人材に「選ばれる組織」になるためには、今まで通りの方法では通用しない。一人一人の能力が十分に発揮できる組織にするには、現状維持を打破し、誰もが働きやすい職場環境に変えていく必要がある。
JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫は昨秋、役職員の働きがいや組織への貢献意欲などを把握しようと「エンゲージメント調査」を始めた。2024年度は37県域194JAが取り組んでいる。
その一つがJAさいたま。同JAは16年に広域合併したことで、職務内容が変わった若手職員を中心に不満が募り、トップダウン経営ではなく若手の意見を経営に積極的に取り入れていこうと、若手や女性職員を中心とした「JANP(ジャンプ)」を結成した。JAによるNew Project(新たな計画)の略で「前例を作っていくJA」を目指す。メンバーは本店の清掃活動や支店装飾、支店かわら版作り、キッズコーナー設置などを自ら提案、変化を生み出している。
注目したいのは職員の提案をトップが歓迎し、柔軟に受け止めることだ。清水節男組合長は「農業の形態が変わる中、JAも変わらなければならない。その中核を担うのがJANP。JAの方向性を示してほしい」と期待する。
エンゲージメント調査の結果、同JAの重点対応項目は「経営層への信頼感」「戦略の浸透」「リソース(人材)の配置」「教育研修」などが上がった。経営層への信頼感をどう高めるかについて、「誰もが(役員に)意見を言える目安箱を作ってほしい」と女性職員が提案、「必ず役員は回答してほしい」と求めた。こうした提案は、25年度からの同JAの中期3カ年計画に盛り込む方針だ。
大型合併が進めば、現場の職員と幹部の心の距離は遠くなる。持続可能なJAになるには、若手や女性職員が働きやすい環境を整え、現場の提案を経営方針に生かす必要がある。若手、女性が生き生き仕事をしているかが、組織のバロメーターとなる。コミュニケーションを深め、風通しの良い組織をつくろう。