[論説]鳥インフル急拡大 未発地域も警戒強化を
今季は4日時点で14道県で51事例が確認され、約934万羽が殺処分の対象となっている。発生事例の7割近くが1月に確認されたことで、鶏卵卸売価格(東京、M級基準値)は1年半ぶりに1キロ当たり300円台となり、供給面での不足感が強まっている。
農水省は1月末に対策本部を開き、早期の通報徹底などを改めて求めた。江藤拓農相は1月の発生拡大について「過去に例を見ない件数」とした上で、「養鶏を守るだけでなく国の食卓に関わる」と述べて関係者への対応強化を呼びかけた。
特に発生が相次いでいる愛知、千葉、岩手の各県では現地対策本部を設置、緊急消毒などによる封じ込めを進めている。
注視すべきは、野鳥でのウイルス確認と家禽(かきん)での発生地域が必ずしも重なっているわけではない点だ。今季に家禽で発生した14道県のうち、野鳥のウイルス感染が確認されたのは7道県にとどまる。
1月下旬には青森県の野鳥で今季初のウイルスが確認され、幅広い地域で拡散が続いている恐れがある。野鳥でのウイルス確認が農場に近い場合はもちろん、過去に発生がない地域も、野鳥の侵入を防ぐネットの確認など、防疫対策を改めて徹底したい。
多発の背景には、ウイルスが環境中に多く存在していることが指摘されている。農研機構によると、昨年10月から11月末までに侵入したウイルスから、4種類の遺伝子型が検出された。家禽での発生が少なかった前季は2種類だけ。ウイルスの遺伝子型が多くの種類で見つかっている場合は、環境中のウイルス量も多い可能性があるという。
近年、ウイルスが検出される期間は、早ければ9月下旬から4月下旬までと長期間に及ぶ。中でも2021年秋から22年にかけては家禽、野鳥とも、最後に確認されたのは5月14日だった。
日本海側を中心とした大寒波の到来で除雪に苦慮する地域は多いが、気温が上がり暖かくなり始めれば野鳥の北帰行が始まる。移動とともにウイルスが運ばれ、感染が広がる恐れがある。
厳しい寒さの中での鶏舎の点検や防疫作業は難しいものの、被害をこれ以上拡大させないために、人や車両の消毒や野生動物の侵入防止を徹底してほしい。