[論説]大雪被害からの復旧 離農を防ぐ対策万全に
冬型の強い気圧配置の影響で2月上旬、北日本から西日本にかけて日本海側を中心に大雪に見舞われた。年末年始に断続的に降雪が続いた青森県では平地でも平年の3倍を超える記録的豪雪となった。日本海に平年より海面温度が高い海域があり、大陸からの強い寒気が通過する際に大量の水蒸気を取り込んだことが原因とみられる。線状降水帯と同様、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が発生するリスクは年々高まっている。
青森県によると、死者9人を含む死傷者150人以上の人的被害が発生。リンゴの枝折れは11市町村で報告され、パイプハウスや牛舎など農業施設の被害額は、判明分だけで約8000万円に上る。被害額は今後も増える見通しで、県は「災害級」の豪雪として国の支援を求めている。
大雪による災害救助法の適用を決めた青森、福島の両県では、離農や後継者への継承断念を検討している農家もいる。雪害などの災害が離農の契機とならないよう、収入保険や農業共済に加入していない農家も対象となるよう幅広い支援措置を求めたい。生産資材の高騰は長期化し、農業経営は厳しい。食料安全保障の確保、地方創生の観点からも激甚災害への早期指定を含め、農業を続けていける万全な支援策を急いでほしい。
青森県内では、ドローンなどで園地に融雪剤を散布する動きも出てきた。残雪で春作業の遅れが懸念される中、融雪剤を散布する人手が足りない農家から期待が寄せられている。JA全農あおもりや県内JAは各地で実演会を開き、申し込みを受け付けている。県もリンゴ園地での空中散布の請負費用に対する補助を決めた。スマート技術による雪害対策であり、現場の創意工夫を後押ししてほしい。
気がかりなのは、農水省が中山間地域等直接支払制度の集落機能強化加算を廃止する方針を示していることだ。同加算措置は、雪下ろしが困難な高齢者を手助けする地域の活動にも支援が得られた。集落での雪下ろしができなくなれば、住み慣れた地域を離れる決断を迫られる高齢者もいるだろう。
今冬のような大雪は、他の地域でも発生する可能性があり、大地震などと同様、被災自治体を支援する制度を検討する必要性もある。地域で農業を続けていける万全な復旧支援を求めたい。