[論説]飼料流通の2024年問題 受け入れ体制 改善急げ
物流24年問題は、トラックなど自動車運転手の働き方改革を受け、運転手の不足や、そこから派生するさまざまな問題を指す。働き方改革関連法に基づき運転手に設けられた時間外労働時間の上限が引き下げられ、長距離運転の対策や荷降ろし・荷受けの時間短縮が求められるもので、昨年4月1日に施行された。
農業界では、生産に利用する資材の搬入にも対応策が求められてきた。特に季節を問わず、継続・安定した搬入が必要なのが配合飼料だ。働き方改革を受け、配合飼料を運ぶ運転手の負担をどう軽減するかが、問われている。
飼料の減り具合は一定ではない。家畜の生育ステージや飼育環境の変化で減りが早い時やゆっくりな時もあり、配送計画を立てにくい。突然発注されても、運転手が不足していては対応できない。農場の管理者には、飼料残量の確実な把握、配送業者との情報共有が改めて求められる。
農場が、運転手個人の作業に頼っている部分も多い。鳥インフルエンザなどの感染症対策として、ウイルスを農場内に持ち込まない配慮が運転手に求められる。消毒作業も増え、飼料タンク上部のふたの開閉や飼料添加剤の投入の際には、高所作業が伴う。高さ2メートル以上の高所作業には、労働安全衛生法令で、墜落防止措置が求められている。
飼料配送が持つこうした点から、農水省の飼料流通の合理化に関する検討会では「人手の確保をさらに難しくしている面がある」と指摘。物流業界の中でも、特に難しさを抱えていることが分かる。
先月開かれた飼料輸送のシンポジウムでは、輸送会社に入社した女性運転手が、添加剤の紙袋を担いで飼料タンクに上れず、1週間で辞職したとの話が出た。農場主ではなく、運転手が残量を把握して発注するケースもあり、運転手頼みの面も指摘された。
運転手不足時代に対応するためには、飼料を発注する農場側の体制整備も必要だ。タイムリーで無駄のない発注に向けた残量管理システムや、高所作業をなくす地上からのふた開閉装置、タンクに上る固定はしごに付ける落下防止の「背かご」設置など、農場側でできる安全対策は多い。
法施行からほぼ1年となり、農場ごとに見えてきた課題はあるはずだ。合理的な発注の仕組みや安全対策など、農場の点検を進めたい。