[論説]飼料用米生産の意義 地域内循環の輪 絶つな
国は米の消費減少に伴う米価浮揚を目指して、主食用米からの転換を促そうと2008年産から飼料用米に助成を開始し、生産を進めてきた。省力・多収栽培技術の確立で生産コストを抑え、耕畜連携の推進、飼料用米を給餌した畜産物のブランド化や、生産と実需の複数年契約による長期の安定的な取引拡大なども進めてきた。輸入に依存する濃厚飼料の国産化に向けた支援を続けた結果、22年産の飼料用米は過去最高の80万トンとなり、20年に閣議決定した食料・農業・農村基本計画で30年の生産努力目標として定める70万トンに到達した。
だが昨年12月、財務相の諮問機関である財政制度等審議会が、27年度以降の水田政策見直しに合わせて飼料用米を助成対象から除外することを提起、飼料用米産地に動揺が広がった。国は飼料用米中心の生産体系を見直し、粗飼料である青刈りトウモロコシなどを振興する方針を示したが、「はしごを外された」と不信感を抱く産地もある。濃厚飼料と粗飼料では、畜産農家にとって給与体系が全く異なる。今回の見直しは、地域内循環の輪を壊すことはもちろん、畜産農家を軽視していると言わざるを得ない。
耕畜連携に先駆的に取り組んできた千葉県旭市は、飼料用米の生産量の8割以上を、畜産農家と耕種農家、行政でつくる組織が仲介し、畜産農家が利用している。同市は強湿田地帯のため麦、大豆などの生産に不向きで、08年産から飼料用米への転換を本格的に進めてきた。飼料用米を通じた地域内循環を生み出し、増産に前向きに取り組んできた。飼料用米の生産は補助金があって成り立ち、産地からは「これまでの努力に水を差す」「補助金の削減には反対だ」との強い声が上がる。
主食用米の価格上昇で産地の増産意欲が高まり、農水省の25年産水田の作付け意向調査では、東日本を中心に19道県が前年と比べて主食用米の生産を増やす。一方、飼料用米は前年と比べて1万4000ヘクタール減の8万5000ヘクタールと、増産する県はゼロとなった。
専用品種以外は国からの助成金が減額されることが大きいためだが、時間をかけて地域内で築き上げた耕畜連携の輪をここで壊すべきではない。主食用米の高値が今後も続く保障もない。食料安全保障の観点から、飼料用米への支援拡充を求めたい。