[論説]揺らぐ生産基盤 水田農業守る政策急げ
農水省が公表した、都道府県による1月末現在の主食用米作付け意向は、128万2000ヘクタール。前年産の実績より19県が増やす意向だ。増加傾向にあるのは、24年産の5県から大幅に増えた。前年並みは24県、減少傾向は4県だった。
128万2000ヘクタールは、平年作の収穫量に換算すると691万トンになる。需給が安定する生産量として同省が示す683万トンより8万トン上振れする。ただ、この8万トンが過剰気味なのか、流通の不足感を考えるとどうなのか。同省ですら事態の正常化に苦戦している中で、判断は難しい。産地が適正生産の見極めに悩むのは当然だろう。
今回の増産の勢いも気になるところがある。年末から年明けにかけて各県が示した「生産の目安」と比べると、増産幅が縮まっているからだ。各県の目安を合計した全国の面積は129万6714ヘクタールで、今回の意向はそこから1万7000ヘクタールほど減った。特に西日本で減少が目立つ。目安を設定した時期よりも米の価格はこの間、さらに上昇した。生産意欲が高まる条件があるにもかかわらず作り切れないとしたら、生産基盤の弱体化を懸念する必要がある。
主食用米以外の作付け意向はどうか。飼料用米は8万5000ヘクタールで、24年産の実績から1万4000ヘクタールも減る見通しだ。35県が減少傾向で、増加傾向の県はなかった。一般品種に対する助成が引き下げられることもあり、主食用米への転換がかなり進むと見られる。加工用米も24年産実績から3000ヘクタール減る見通し。自給率向上へ増産を目指している麦は2000ヘクタール、大豆も3000ヘクタール、それぞれ減る意向となっている。
これら戦略作物に主食用米、備蓄米も加えた水田への作付面積は、合計169万6700ヘクタール。24年産の実績から2700ヘクタール減る計算だ。主食用米の作付けは増産意欲の高まりで大幅に増えるものの、水田利用が広がる展開にはならず、未作付けが発生してしまう恐れがある。
今、直面する米の異常事態を正常に戻すのは、喫緊の課題だ。だが、その裏では生産基盤の弱体化がうかがえる。政府・与党は27年度から新たな米政策をスタートする。水田を将来にわたって安心して守り続けられるよう、混乱の課題を踏まえ、より強い政策を打ち立てる必要がある。