[論説]基本計画に生協が提言 農業続けられる政策を
政府は基本計画の主要施策として大規模経営化、スマート農業の推進、輸出の促進などを掲げた。これに対し、産直を続ける消費者の立場から多様な意見が相次いだ。
全国の生協6グループはそれぞれ、食料・農業・農村基本法の改正を機に協議を重ねてきた。3月27日には基本計画策定に関する提言を共同で農水省に提出。約300人が参加した意見交換会も開き、国会議員や農水省に消費者の声を届けた。米国のトランプ政権が相互関税を提起するなど世界貿易が不安定化する中、そうした情勢に翻弄(ほんろう)されない強い生産基盤を構築することが、ますます重要となっている。
農業は、作る側と食べる側の双方がいてこそ成り立つ。求めたいのは、小規模農家、若者、移住者、障害者など多様な農業の担い手を支援し、中山間地域や島しょ部など地域の気候風土に応じた食料政策を確立することだ。
6生協の提言は、食料自給率の向上、適正な価格形成、環境保全、安全性確保と表示、農村振興の5項目に上る。生活クラブ事業連合生協連合会の村上彰一会長は「農家の所得確保が最重要課題であり、持続可能な農業の政策を求めたい」と生活者の立場から提起した。地球温暖化に加え、高齢化で農家の減少は進み、主食の米を含め、将来的に十分な食料を国内で入手できない事態も想定される。それだけに農業生産の強化や担い手確保を求める提言がJAだけでなく、生協組織から出たことに大きな意義がある。
生協組合員は生産現場を訪ね、農家と価格交渉を行い、農業の厳しい現状を直視する。「農業を子どもに継がせたいという農家はほとんどいない。これでは子や孫どころか自分たちの食も危ない」(生協連合会アイチョイス)。
生協側は、農家の所得確保に向けた抜本的な施策として、所得補償のような直接支払いの導入を求めている。適正な価格形成に向けた仕組みの確立も「重要」としながら、山火事や豪雨などの気象災害が増え、生産資材の高騰が続く中では、生産コストの上昇による赤字部分を補填(ほてん)する直接支払いを基本とすべきと提言する。「農業は農家の問題だけでなく、私たちの食べ物の話」(グリーンコープ生協ふくおか)。政府はこうした声を受け止め、食と農業の未来を考えるべきだ。