[論説]「女の階段」が集い 書きつなぎ行動しよう
今回の発起人は、愛媛県「いよじ」グループ代表世話人の矢野洋子さん(78)。投稿欄で「5人でも10人でも開きます」と呼びかけ、全国から25人が集まった。2021年に予定していた広島県での全国集会は、新型コロナの感染拡大で中止。15年の東京大会から10年、18年の三重大会から7年がたっただけに、今回で「女の階段」参加の幕引きを考えている人が多かった。
参加者の心の変化には、駒澤大学経済学部の姉歯曉教授の講演が影響した。農業や女性の地位、政治・経済、社会の変遷をたどりながら今に続く“農村ジェンダー”の問題点を指摘、「変えていくべきものは山積している。行動してきた皆さんが、『女の階段』を降りるのは早いのではないか」と問いかけた。
農と食をどう守るか、家事や育児、介護といった家庭内での男女間格差、貧困など社会の中での格差……。課題は山積するが、行動を起こすことで開ける未来はある。
姉歯教授が提案するのが、「始動している若い農業者や異業種との連携」だ。世代や性別、立場を超えて話し合うことで、今までと違う解決の道へつながる可能性はある。
「女の階段」第1回全国集会(1976年)のきっかけをつくった評論家の故丸岡秀子さんは、「読むこと 書くこと 行うこと」という言葉を残した。「書きっ放しはだめ、書いたことに責任を持つ、つまり実行する」という教えが凝縮されている。「書く」ことによる発信の次に重要なのは、「行動」であることは今も変わらない。
姉歯教授の著書「農家女性の戦後史~日本農業新聞『女の階段』の五十年」(現代思潮新社)は性別や世代、職域を問わず関心を集めている。高齢の男性は「母親のたどった道を知りたい」と言い、若い世代は「今につながる問題が書かれている」と述べている。農家の女性のたどってきた苦難の歴史を次の世代に繰り返さないためにも、書くことと合わせ行動を起こそう。
「女の階段」のメンバーが積み重ねてきた歴史を知ることが今、求められている。それぞれの経験や知識が、根っこに潜む問題を解決するヒントとなり、男性優位の社会を変えていく知恵となるからだ。思いや考えは発信しよう。次の「階段」は、次世代へ伝えるために行動すること。それが人を育て、未来を開く。