[論説]仕事と育児の両立 誰もが家事担う時代に
改正育児・介護休業法が1日に一部施行され、子どもの看護休暇の対象が、入学式などの行事参加や感染症流行による学級閉鎖にも広がった。取得できる期間も「小学校入学前まで」から「小学校3年生まで」となり、残業免除も「3歳になるまで」から「小学校入学前まで」となった。育休中の生活を支える「出生後休業支援給付」も拡充。最長28日間、育休前の収入と同水準まで引き上げられた。
ただ、支援の対象は雇用保険の加入者で、個人経営の農家は対象外。従業員が4人以下の場合は任意加入となる。家族経営を含め、働きやすい環境整備が求められている。
女性が活躍するための第一歩は、家事や育児、農作業をパートナーと公平に分担することから始まる。内閣府によると、女性活躍が進まない理由として女性の8割以上、男性の7、8割が「女性に家事・育児などが集中している」ことを挙げている。
農林漁業従事者の1日の家事・育児時間は女性が2時間57分と、男性26分に比べて約7倍多い。日本農業新聞「農家の特報班」による女性活躍アンケートでも、「田舎では家事・育児は女性がする意識が根強い」「家事や育児は母親がやるという圧を感じる」という声が相次いだ。見えや体裁、世間体は横に置き、男性はできそうな家事をやってみてほしい。きっと、新たな気付きを得られるはずだ。
部下の仕事と私生活の両立を配慮できる管理職を「イクボス」、子育てを妻と楽しめる男性を「イクメン」と呼ぶ。農村やJAでもイクボス、イクメンを増やそう。
フランスでは女性農業者の妊娠、出産、育児の支援制度が充実している。愛知学院大学の関根佳恵教授によると、同国では1976年に女性農業者の14日間の産休制度が設けられて以来、2008年には他産業並みの最長16週間まで延長。産休取得中は代わりの労働者が手配され、その費用は農業共済保険で全額カバーされる。男性が育児休業を取れば同様の手当がある。
国内では、東京都農林水産振興財団が「農業者出産・育児期支援事業」を設け、都内在住の認定農業者らを対象に、出産や育児休業中に代わりの人材を雇う場合、賃金の半額以内を助成する。性差にとらわれず誰もが家事・育児を担う時代へ、意識改革と政府の支援強化が必要だ。