晴天続き「水が全く足りない」
道南の米どころの一角を担う七飯町。ここで耕作面積60ヘクタールのうち、水稲1ヘクタールを栽培する小澤大栄さん(49)は、ひび割れた水田を前に、険しい表情を浮かべる。23日に降雨があったが、通水が止まった日から22日までは晴天が続き「水が全く足りない」と訴える。
全て直播(ちょくは)栽培で「苗はまだ細い。この時期に水がないことは非常に問題。今後の成長の妨げになる」と困惑する。
通水が停止した2市1町の水稲農家数は300戸に上る。田植えが終わり、本来なら苗が水に浸っている時期だが、複数地点で田のひび割れが見つかっている。
地元のJA新はこだては現在、横道重人組合長らが影響のある水田を巡回するなど対応に追われる。「これから水の管理が重要な時期。このまま水が供給されず、深水などの管理ができないと、収穫ができても品質の低下や不稔(ふねん)粒が増え、収量の減少も想定される」(生産販売部)と懸念する。
JAや道、2市1町などの関係機関は河川からの取水なども進める。ただ、ポンプが足りないなど課題も多く、抜本的な解決策が見いだせていない。
通水停止の影響を受ける2市1町は、日本穀物検定協会による2022年産米の食味ランキングで、4年連続「特A」を獲得した「ふっくりんこ」の産地。さらに北斗市は道内唯一の同品種の種子産地でもある。今年産の品質、収量に加え、原種の確保や来年以降の種子供給にも影響が出ないか不安が広がっている。
<メモ>
北電の七飯水力発電所は、七飯町内の沼の水を利用して発電。利用後の水は地元の渡島平野土地改良区のかんがい用水へ供給し、周辺地域の米作りに活用されてきた。北電によると、17日に発電施設の故障が見つかり、水の供給が停止。同改良区によると2市1町の水稲約1000ヘクタールに影響が出る可能性がある。
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