個別経営の部
農地守って雇用創出も 川口グリーンセンター(宮城・栗原市)
■代表取締役・白鳥正文さん(64)=法人設立から23年。長年地域のためにやってきたことが評価されうれしい。地域の農家減少を見込み、農地の集約を進めてきた。中山間地域で転作が難しいが、米を軸とした多角化経営で若い従業員を通年雇用している。今後も作業委託など規模拡大が見込まれるので、それに対応できる米づくり、販売体制を整えていきたい。
▶受賞理由=水稲80ヘクタール、作業委託6・8ヘクタールや花きなどの大型複合経営を実践。担い手と協議会を設立、農地の大規模化など面的な集約をしてきた。米粉事業部を持ち、米粉パンや冷凍生地、ミックス粉などを販売。地域に買い物ができる店が減る中、宅配や送迎に対応した直売所を運営。コンビニエンスストア機能を担い、貢献する。
飼料自給へ地域内連携 須藤晃さん、淳子さん(前橋市)
■須藤晃さん(53)=10年以上前から前橋市内の農家が生産した飼料を使い続けてきた。やっと認めてもらえてうれしい。品質が安定するまで耕種農家や県、市と勉強会を開き、適した品種を探ってきた。ただ、慣れない飼料に乳量が減り「良いことをやっているはずなのになぜ」と悩んだ。苦しい時期を公私で支えてくれた妻あっての受賞。感謝している。
▶受賞理由=経産牛114頭、育成牛70頭を飼育する。市内の耕種農家と密に連携し、粗飼料の品種を選定。粗飼料自給率は、8割に達した。乳酸菌を添加した飼料を給餌し、異臭対策にも気遣う。危害分析重要管理点(HACCP)取得やアニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理)を重視し、牛が過ごしやすく、従業員が働きやすい環境を実現している。
労働環境、他産業並みに かまくらや(長野・松本市)
■社長・藤本孝介さん(43)=異業種から参入し、農地も農業経験もない状態から始めたことを思うと、受賞できたことに驚いている。農業大学校や農業高校の新卒者を、他産業と同じ労働環境で雇用する「サラリーマン農業」を目指してやってきた。そこを評価してもらえてうれしい。若い力を生かし、地域農業の担い手として頑張っていきたい。
▶受賞理由=自動車販売業から新規参入。耕作放棄地や条件不利地も受け入れ、220ヘクタールを管理する。主要作物のソバでは、全国的に珍しい二期作と機械化を進め、10アール当たり230キロ(二期作合計)の高収量を実現。農業を就職先の選択肢にしてもらうため、育休取得や有休消化、残業代の支払いなど他産業と同じ雇用環境を整えている。
集団組織の部
震災乗り越えV字回復 JA会津よつばかすみ草部会(福島・昭和村)
■部会長・立川幸一さん(64)=これまでの苦労が実った。全国の市場や花屋から評価を頂き、栽培を続けてきて良かったと思う。生産者の減少や連作障害の影響で1品目で50年、100年と続く産地は他にない。だが、われわれの産地は、もう40年以上続いている。100年産地を目指して頑張っていきたい。皆に愛される宿根カスミソウをこれからも作っていく。
▶受賞理由=同県昭和村など、4町村の91戸でつくる。東日本大震災の影響によって、生産本数が減った時期もあったが、新品種の登場や部会員の増加、単品ならではの輸送体制の構築でV字回復を実現。2023年度は過去最高の生産本数532万本、販売額6億4795万円を達成した。部会の平均年齢は50代と若く、新規就農者も順調に増えている。
市場ニーズに柔軟対応 西尾鉢物出荷組合(愛知・西尾市)
■組合長・犬塚和義さん(66)=組合員や市場関係者が一丸となって確立した出荷体制が受賞につながった。53年間積み上げてきた組合の歴史が評価されたと思うとうれしい。組合では「1ケース からのニーズにも的確に応える」をモットーにしている。これからも和物、洋ラン、観葉、鉢花の四つの部会が一つにまとまった共同出荷の強みを生かし、多様なニーズに応えたい。
▶受賞理由=生産者80戸で構成し、北海道から鹿児島まで年間390万鉢を出荷する。集荷・輸送する運送会社を一元化し、運送会社間の運賃格差を解決。全国の買参人と契約でき、小ロットの注文に応えるメリットも創出した。組合員は前日までの出荷予約や集出荷場の持ち込み時間を厳守。個選農家に比べて平均20%安い運賃を実現させた。
担い手を呼ぶ団地整備 JA岡山加茂川ぶどう部会(岡山・吉備中央町)
■部会長・瀬尾和弘さん(60)=ブドウ団地の整備や技術指導、新規市場の開拓など先輩農家の挑戦があったからこその受賞だ。これまでの歩みが走馬灯のように思い出された。共に取り組んだ県や町、JAと喜びを分かち合っている。岡山にIターン就農して10年。自分も受け入れられたように新規就農者を手厚く支え、産地を盛り上げたい。
▶受賞理由=県などの「岡山ハイブリッドメガ生産団地」事業によって遊休地をブドウ団地に整備し、新規就農者の獲得につなげた。23年度の販売金額は2億8000万円と11年度と比べ7・3倍、生産者数は1・7倍に急成長。44戸の生産者のうち、半数近くを移住者が占める。出荷先は県内から東京、横浜、大阪に拡大し、輸出にも取り組む。