中村選手は最速160キロの直球と多彩な変化球を操り、3月に大学生ながら侍ジャパンに選出された逸材。諫早農業高校では農業土木科に所属し、測量士補の資格を取得するなど農地保全に関する学びを深めた。その傍ら1年時から野球部のエースとして活躍した。
この日、同校で運命の瞬間を待っていたのは、中村選手の3年時の担任で同科の西村健幸教諭(43)。思い出すのは、保護者を交えた三者面談だ。その場で中村選手は「プロ野球選手になりたい」と宣言した。
同科は公務員を目指す生徒がほとんど。思いもよらぬ宣言に、西村教諭は「絶句した。農業高校の教諭を20年以上やっているが、『プロになりたい』と言ったのは中村ただ一人」と振り返る。指名を受けて「夢のような話が現実になった。郷土の誇りだ」と感慨深げだった。
同校野球部の前監督、宮原寛爾さん(66)は「私にとって中村は宝物だ。全国の農高生に勇気や希望を与えられる選手になってほしい」と期待を寄せた。