有機農業を率先して進めてきた大分県臼杵市は、2011年から市が製造した堆肥などで有機栽培した農産物を独自ブランド「ほんまもん農産物」として認証。学校給食で優先利用し、有機へ移行を進めてきた。市の取り組みは移住者からも注目を集めている。

2月、臼杵市の山間いにある「市土づくりセンター」。JAおおいたのトラックが乗り入れ、運転手が荷台に積んだ規格外のサツマイモを下ろし始めた。
センターは農業の基盤となる土作りを農家に代わって行おうと、10年に開設。せんてい枝や廃棄野菜など草木類8割、豚ぷん2割を発酵させた完熟堆肥「うすき夢堆肥」を年1600トン製造している。
「家畜のふん尿処理のためでなく、地域資源を再利用して良い土を作ることが目的。草木主体の堆肥を作る施設は珍しい」と市有機農業推進室の兒玉優・総括室長代理は言う。

この堆肥を使い有機栽培した「ほんまもん農産物」の生産者は11年度は11戸約2ヘクタールだったが、市が始めた農業研修制度などで23年度は49戸約31ヘクタールに増えた。1・2ヘクタールでほんまもん農産物を生産し、給食に年間10品目を納めている林大悟さん(35)もその一人だ。
「以前から有機農業に興味があった」と言う林さんは18年に地域おこし協力隊(有機農業担当)として兵庫県から臼杵に移住。任期中に研修で有機栽培を学びながら、市内の耕作放棄地を開墾した。
これまで協力隊は20人中6人が就農。林さんは売り上げの1割が給食で「地域の子どもに食べてもらいたい」と給食への出荷を増やしたいと話す。
市が23年度に給食で使用したほんまもん農産物の割合は24%で、有機食材が占める割合が高い。移住を担当する市地域力創生課によるとこうした取り組みも奏功し「有機給食や有機農業を進めている町を探して移住相談に来る人が多い」と言う。実際に23年度までの9年で市の定住支援制度を使って2030人が転入。8割が40歳以下の若い世帯だった。
市は給食のほんまもん農産物の割合をより高めるため、国のみどり戦略の交付金を使い生産者から慣行の市場価格の1・5倍で購入している。一方、25年度からは交付金が切れ自主財源で賄う必要がある上、市独自で給食無償化を始めるため財政負担が増える。
市有機農業推進室の担当者は「26年度から国が一律で給食無償化するが、今までの質を落とさず給食を提供できるように国は予算を確保してほしい」と動向を注視する。
臼杵市の概要
■人口:3万3181人(2月1日)
■給食の地場産農産物の割合:42%(うち24%が有機栽培されたほんまもん農産物)
■学校給食無償化の予算:1億689万円
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