国産食材をカロリーベースで5割以上使う店の証しとして、「緑提灯(ちょうちん)」=ことば=を居酒屋などの軒先に掲げて、23日でちょうど20年を迎えた。緑提灯運動に賛同するのは、国内外に3802軒に上る。近年では緑提灯に対する人々の関心が薄れ、新たに賛同するのは1カ月に1軒程度。それでも“食の国産回帰”に取り組む草の根運動は今も歩みを続けている。

発案者は元農研機構・中央農業総合研究センター所長の丸山清明さん(78)だ。札幌市に赴任当時、市内の居酒屋に立ち寄るも店には地酒がなく、近所のスーパーにはチリ産のサケがずらり。「北海道は国内有数の食料基地なのに……」と心を痛めた。この出来事を機に国産を応援する緑提灯運動を考案した。
2005年4月23日、北海道小樽市の居酒屋開(ひらく)から始まった緑提灯運動が劇的に増える契機となったのが、08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件。この一件が運動を後押しし、メディアの露出が増加。4年目には1000軒を超えた。
緑提灯運動は着実に根付いている。東京都港区の炉端焼うだつは18年ほど前から軒先に掲げる大きな緑提灯が目印。北海道料理を扱い9割以上が国産食材で、五つ星を掲げる。
店長の西田勝己さん(40)は「緑提灯の店という信頼でコロナ禍後も来店客は途絶えなかった」と振り返る。国産食材の値上がりについて「特に米の値上はりはきついが、緑提灯を掲げている以上、来店客を裏切れない。お客さんに喜んでもらえる国産にとことんこだわりたい」と話す。
一方、やむなく緑提灯を外したところもある。福岡県宮若市の福丸保育園だ。以前は給食の国産使用率は7割以上だったが、現在は、地元の納入業者が次々と廃業しことで、国産食材を一定量入手するのが困難となった。
園長の中村智顕さん(62)は「人口減で地元からスーパーが撤退した。本当は掲げたいが……」と嘆く。
近年では緑提灯に賛同する店舗がめっきり減った。また運営側の高齢化が進んでいる。 発案者の丸山さんは、妻の介護などがあり、以前のように講演などのPR活動ができなくなった。「少しずつ店を畳むように、活動を縮小しているが、一軒でも賛同する店が増える限り、やめるわけにはいかない」と力を込める。
(前田大介)
<ことば>緑提灯
ちょうちんにある星の数が、カロリーベースで国産食材の割合を表す。5割以上で一つ、以後1割増えるごとに追加する。星の数は自己申告で。申告違反をした場合、頭を丸めるなどの罰則はあるものの、基本的に信頼を重視する。登録には緑提灯の代金1万2500円が必要となるが、入会費や年会費は不要。国内だけでなく、米国や韓国、台湾、フィリピンにも広まる。