理事会後、相撲協会の使者として出羽海理事(元幕内小城乃花)と秀ノ山親方(元大関琴奨菊)が茨城県阿見町の二所ノ関部屋に赴き、大の里と師匠に伝達。大の里は「横綱の地位を汚さぬよう稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」と口上を述べた。

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新横綱大の里が相撲留学で中学・高校時代を過ごした新潟県糸魚川市の生産者からも、喜びの声が上がる。
同市でブランドナス「越の丸茄子(なす)」を栽培する橋立力さん(62)は新横綱の口上を聞き、「自分たちが育てるナスも、横綱のように『唯一無二』になりたいと思った」と意欲を高める。
橋立さんは、JAえちご上越ひすい丸茄子部会の会長を務める。昨年、市内で開かれた催しで、当時の大関大の里に「越の丸茄子」を手渡した。
その時の印象を「大きい人だと思った。筋肉質な体格」と語る。「頑張ってください」「ありがとうございます」の短い会話だったが、横綱昇進を決定づけた今場所も「毎日見ていた」と応援する。
横綱昇進伝達式があった28日、橋立会長の姿は圃場(ほじょう)にあった。大の里と同じ20代前半の受講生もいる「丸なすミニ農業塾」の塾長として、担い手育成に努める。
昨年は半身萎凋(いちょう)病に悩まされた。糖蜜を使った土壌還元消毒をし、万全の構えで栽培に臨む。
橋立会長は「ゆかりのある人の活躍はうれしい。農業の張り合いにつながる」と一層の活躍に期待する。
(大高摩彩)
「まさか泰輝がこんな早く横綱になるとは」。こうたたえるのは、石川県津幡町のJA石川かほく津幡東支店の共済担当で、町立津幡小学校時代に横綱大の里とクラスメートだった今井優さん(24)だ。
大の里とはグループ活動で同じ班になった間柄。小学校時代から優しい性格で、「みんなが話しかけやすい、人から慕われる存在だった」と話す。特に目を見張ったのは、給食時間。当時から大柄の大の里は、「何杯も給食のご飯を平らげていた」と振り返る。
大の里は、中学から古里を離れ、新潟県糸魚川市に相撲留学をし、離れ離れとなったが、同町は相撲が盛んな地域。家族ぐるみで応援していたという。
綱とりがかかった今場所は、取り組みがある午後5時台になると、「気になり、仕事が手につかなかった」。
大の里が横綱となった今は、「郷土の誇りに思う。けがに気を付けて、『唯一無二』の横綱になってほしい」とエールを送る。
(前田大介)