少子化で利用が減った公園の空き地を貸農園に再生する試みが、神戸市で進んでいる。農業に関心がある都市住民の要望に応えるとともに、公園内の維持管理が高齢化で難しく、貸農園にすることで課題解決を狙う。作土は、市内の遊休農地の土に、市の下水汚泥由来リンを含んだ肥料と市内の牧場の堆肥を混ぜたもので、地域循環型農業の発信地としても期待される。
阪神電車の大石駅から徒歩2分、同市灘区の都賀川公園で4月に貸農園「LOCAL FARM 神戸大石」が開園した。公園のアウトドア施設の整備などを手がけるファクティブ(東京都武蔵野市)が、500平方メートルに76区画を設けた。
申し込みは定数の2倍を上回り、人気ぶりがうかがえる。1区画6平方メートルで、月額7590円。作業に必要なくわやマルチ、防虫ネット、トンネル支柱の他、苦土石灰や化成肥料など資材、5~10種類の野菜種も利用料に含まれる。病虫害診断はLINE上で同社に画像を送って相談できる。
開園に当たり、利用者が、同社スタッフから設備の使い方や作物に応じた畝やマルチの立て方を教わった。
同市東灘区の会社員、小柴昌子さん(48)は退職後に農業をしたいと、初歩から学ぶために申し込んだという。「駅から通える近さが決め手」と語った。
JAとタッグ組んだ肥料、利用拡大へ
市は持続可能な開発目標(SDGs)推進の一環で、2015年から下水汚泥由来リン肥料をJA兵庫六甲を通じて販売する。この肥料を使うなど環境に配慮して栽培した農産物に「BE KOBE」のブランドロゴを入れて販売し、貸農園でも利用拡大を目指す。市内の公園数は1600以上あり、政令指定都市での1人当たりの公園面積はトップクラスだ。一方、公園内の空き地管理が課題で、都賀川公園もこれまで地域コミュニティー組織が担ってきた草刈りや清掃といった日常的な維持管理が、高齢化で難しくなっている。貸農園に再生することで課題解決を狙う。
同社の井上怜音さん(27)は「家の近くに貸農園があるならやりたいというニーズが非常に強い。なりわいの農家も使う本格的な資材を共同利用することで将来の農業参入へのきっかけにもつながればありがたい」と語る。
(木村泰之)