滋賀・守山市
【レーク滋賀】シャツメーカーや繊維メーカー、JAなどが手を取り合い、綿花の国産化を目指すプロジェクトが、滋賀県守山市で始まった。輸入綿花の相場高騰で国産回帰を目指す動きはいくつかあるが、この取り組みは一歩踏み込んで廃棄衣類由来の堆肥を使った循環型農業モデルに挑戦。環境先進県の滋賀県らしい栽培スタイルを模索しながら作業量や採算性を実証し、農業者への普及を目指す。
栽培するのは繊維長が35ミリを超える「超長綿」と呼ばれるもので、流通量は世界全体の1%程度しかない。繊維が長いため毛羽立ちが少なく着心地に優れ、耐久性も高いことから綿の宝石とも呼ばれる希少品だ。国内での綿花生産がほとんどないことに加え、希少種ということもあり、プロジェクトを主導するメーカーズシャツ鎌倉とJAレーク滋賀で、地域の風土や品種に合わせた栽培ノウハウを探っていく。
さらに付加価値を高めるため、オーガニックを目指して、化学合成肥料や化学合成農薬を使わない栽培手法に挑戦。繊維メーカーのピエクレックスは、自社製の土に返る繊維をはじめ、同市で採れる淡水真珠の貝殻や食品残さなども使った堆肥を提供した。
作付けは市内3カ所の計7・2アールに分散。土質や栽培方法が少しずつ異なるため、比較検証効果も期待される。河川跡で土地がやせている場所もあり、栽培が成功すれば耕作放棄地の有効活用につながると行政関係者は期待を寄せている。
同JAの木村義典理事長は「ぜひ取り組みを成功させて、農家所得向上の有力な選択肢にしたい。持続可能な開発目標(SDGs)は世界的潮流なので、循環型の栽培が大きな付加価値になれば」とプロジェクトの成就に意欲を見せた。
定植した綿花は今後、JAを中心に栽培を進めながら、採算性や作業量などを検証。11月には関係者や地元の子どもたちを招いて収穫し、メーカーズシャツ鎌倉へ出荷する予定だ。