[トレンド情報局]持続可能性 消費の未来占う 提案活発 品選びの鍵に
「安全」「安定」抑え
本紙が青果物や米、食肉、乳製品、花を扱う全国の卸、小売業者らに行った2022年のトレンド調査では、「安全・安心」や「安定」など不動のキーワードを抑え、「持続可能性」がトップに躍り出た。調査は21年12月に行い、150人から回答を得た。
「持続可能性」を選択した理由では、「環境配慮、持続可能な開発目標(SDGs)が当たり前になっていく中で、消費者の選択の一つになる」(乳業メーカー)、「何事においても今後は前提条件になる」(食品スーパー)など、消費者が商品を選ぶ際の重要な要素となりつつある状況がうかがえた。
地産地消や国産志向など、他のキーワードを選んだ理由でも、持続可能性を踏まえて選択したとの声があり、国産農畜産物の販売で追い風となりそうだ。
持続可能性への対応として参画したい取り組みを尋ねた項目では、「食品ロス削減」「包装の工夫」「近距離での調達・輸送効率」が上位に挙がった。
テーマごとに表示
生協や小売りでは、既に「持続可能性」をキーワードとした提案が活発化している。
日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、環境負荷の少ない栽培方法で作られた農産物を使った食品などに共通のロゴを付けた「コープサステナブル」をシリーズ化。21年2月から本格展開し、110品(22年1月時点)を扱う。
「森の資源を守る」「オーガニック」などテーマごとにマークを付けることで環境や社会に配慮した商品であることを“見える化”。組合員からは「シリーズができたことで、エシカル(倫理的)な商品を選びやすくなった」など好評を得る。
若者がターゲット
トレンドに敏感な百貨店各社では、環境や社会に配慮したエシカル商品の専門店を新たにオープンするなど、持続可能性に関心の高い若い世代をターゲットとした販売戦略が動きだしている。
高島屋は、歳暮ギフトやバレンタイン商戦のキーワードの一つとして「サステナブル」を特集。1月下旬から本格化するバレンタインフェアでは、「サステナブルなショコラ」として、食品ロス対策や社会貢献につながるチョコレートなどをそろえる。
バイヤーの野山真由美MD本部食料品部次長は「新型コロナウイルス下で食への関心が高まり、価値基準も大きく変化した。食材の背景に関心を持つ人も増えている」と指摘。「百貨店として、持続可能性を新たな価値として発信していきたい」と先を見据える。
身近な買い物から
イトーヨーカ堂では、特設サイトで、食材を使い切りやすい冷凍野菜や簡便調理品の活用による食品ロス対策などを紹介。身近な商品選択が、持続可能性への配慮につながることを提案する。
農業生産工程管理(GAP)認証や有機JAS認証を取得した生産者による商品の目印として設定する「ゴールドラベル」の紹介では、「環境にも人にもやさしい商品を選ぶことが、サステナブルへの第一歩になる」とアピールする。
「購入の意向」8割
消費者庁が19年度に行った調査でも、「エシカル消費」につながる商品やサービスの購入意向がある人は全体の8割に上った。16年度調査と比べ、「購入意向あり」の割合は19ポイント増と大幅に上昇しており、商品の購買動機としての重要度が高まっている。
付加価値の“見える化”を 東京大学大学院農学生命科学研究科の中嶋康博教授の話
SDGsの浸透や、食品ロスの社会問題化などで持続可能性への関心が高まり、生産工程など「見えない価値」を商品選択時に重視する人が増えている。
需要があっても、供給がなければ、生産、流通、消費がつながった持続可能な食料システムは構築できない。
生産者や産地側は、GAPや有機JASなど、既存の枠組みを活用しながら持続可能な農業を実践し、そういった生産工程を消費者に訴求したい食品企業と取引することで、生産工程を「見える価値」としてアピールすることが可能になる。