
鹿児島県全域で親しまれる郷土のちらしずし「さつますもじ」。野菜や鶏肉、特産のさつま揚げなどたくさんの具材を使う。花見やハレの日には欠かすことができない料理だ。
冬はダイコン、春はナバナなど季節の具材が加わるが、通年欠かせないのがゴボウ。JAあいら女性部福山支部の大山京子さん(68)は「ゴボウの香りが味を引き締める」と強調する。同JA管内で取れるゴボウは香りが良く、あくが少ないのが特徴。柔らかい食感もさつますもじとの相性が抜群だという。
「地酒」が隠し味
「すもじ」とは宮中の女房言葉で、「すし」のこと。同県には「酒ずし」もあり、海や山の幸と酒をふんだんに使い、殿様や上級武士の間で食べられてきた。一方、さつますもじは、季節の食材を使った庶民のすし。「混ぜご飯」や「すしご飯」とも呼ばれる。
おいしく作るこつは、大量に作ること。同支部の立本洋子さん(67)は「米5合以上作らないと味の調整が難しい」と説明する。
一般的なちらしずしと違い、「地酒」を使う。同県独自の調味料で、味はみりんに似る。地酒は灰持酒(あくもちざけ)とも呼ばれ、清酒をつくる過程のもろみ発酵終了間際に、あくを添加して造る。
近年は、子どもでも食べられるように地酒を入れない作り方も増えつつある。同支部の福丸礼子さん(67)は「地酒の代わりにみりんを入れてもおいしい。引き継いでいくことが大事だ」と話す。
レシピ
■材料(4、5人分)
米3合、合わせ酢(酢大4、砂糖大4、塩小1と2分の1)、干しシイタケ4枚、乾燥キクラゲ10グラム、A(濃口しょうゆ大1と2分の1、砂糖大1、みりん大1)、鶏もも肉100グラム、ニンジン40グラム、ゆでタケノコ50グラム、さつま揚げ棒天2本、かまぼこ40グラム、ゴボウ50グラム、B(薄口しょうゆ大1、みりん大1、水1カップ)、錦糸卵適量、「地酒大3」(みりんでも可)
■作り方
①シイタケは水で戻し軸を取り、薄切りに。キクラゲも戻し2センチ幅の細切りにする
②鍋に①とシイタケの戻し汁、Aを入れ沸騰したら弱火にし煮汁がほぼなくなるまで煮る
③他の具材を好みの大きさに切る。ささがきにしたゴボウと一緒に鍋に入れ、Bを加え中火で煮汁がほぼなくなるまで煮る
④硬めに炊いた米に合わせ酢を加え、しゃもじで切る。冷めたら②と③を加え混ぜ、最後に地酒を加えほぐす。皿に盛り、錦糸卵を飾る
[食材ヒストリー]ゴボウ 水田裏作で栽培開始
鹿児島県でのゴボウの栽培は、水田裏作で広まった。JAあいらでは1980年代後半から本格的に1年を通じて栽培を始め、県内の通年栽培発祥の地でもある。
JAごぼう部会は、霧島連山の麓で水はけの良い土壌を生かした高品質なゴボウを栽培する。管内のゴボウは「かごしまブランド」にも認定されている。
柔らかいゴボウにするため、部会長の藤山武行さん(75)は「作付け前に深耕を最低3回はする」と説明する。土づくりにも力を入れ、土壌分析は毎年実施しているという。
旬は1月から初旬までの新ゴボウと、7、8月の夏ゴボウ(サラダゴボウ)。特に新ゴボウは色白で香りも良く、藤山さんは「さつますもじにぴったり」と太鼓判を押す。
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