
琉球料理保存協会で副理事長を務める松本嘉代子さん(83)は「まろやかな甘味が食欲をそそる。ご飯が進む夏ばて知らずの料理だ」と話す。
ナスに似た食感
ヘチマは、たわしなど日用品として使われるイメージがあるが、同県では直売所やスーパーで簡単に手に入る食材だ。ヘチマの果肉は、少しぬめりがあって柔らかく、食感はナスに似ている。ビタミンやミネラルも豊富だ。沖縄本島ではナーベーラーだが、宮古島では「ナビャーラ」、八重山地区では「ナベーラ」とも呼ばれる。
ナーベーラーンブシーの「ンブシー」は、煮汁の出やすい食材を使ったみそ煮を指す。ナーベーラーンブシーは、ヘチマのみそ煮という意味になる。島豆腐と豚肉も一緒に煮込むので、タンパク質やビタミンを効率よく摂取できる栄養満点の料理だ。
料理には、青々しく柔らかいヘチマを使う。ほんのりとした甘味となめらかな口当たりが癖になる一品。種も柔らかく、食感のアクセントになるため、取り除かずそのまま調理するのが一般的だ。
中火でじっくり
味付けは、だし汁と白みそだけとシンプルだが、だし汁が食材と混ざり合って、「アジクーター(濃厚な味)になる」と松本さんは話す。
ヘチマは、火を通すと粘りのあるとろっとした甘い汁が出る。この汁のうま味が料理をよりおいしく仕上げる。松本さんは「中火でじっくりと、焦げ付かないように煮ることが汁を適度に出すこつ」と説明する。
レシピ
■材料(5人分)
ヘチマ900グラム、豚バラブロック肉80グラム、油大2、島豆腐3分の1丁、だし汁50ミリリットル、白みそ大3~5、かつお節少量。
■作り方
①ヘチマは皮をこそげ取り、厚めの斜め切りにする
②豚肉をゆでて、1センチ幅の短冊に切る
③島豆腐は軽く水分を取り、手で適当な大きさにほぐす
④だし汁で白みそを溶く
⑤鍋で油を熱し、②を入れて強火で炒める。脂が溶け出てきたら①を加えて強火で炒め、軟らかくなったら③と④、かつお節を入れる
⑥中火でしばらく煮る。ヘチマから汁が出て、とろみがついたら皿に盛る
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<食材ヒストリー> ヘチマ 開花2週間が食べ頃

県で栽培されるヘチマは在来品種で、農家が種子を自家採種し、現代まで脈々と引き継いでいる。
ヘチマは、開花してから2週間後の若い実を収穫する。成長し過ぎると繊維が強く、ヘチマ特有の滑らかな食感が失われてしまうためだ。おいしいヘチマの見分け方は、長さが20~25センチほどで太過ぎず、表面がきれいな緑色のものを選ぶことだという。