うめざわ・とみお 1950年生まれ。福島市出身。大衆演劇界を代表する役者で「梅沢富美男劇団」の座長を務める。テレビドラマや映画の俳優など、幅広く活躍する。
よく「なんとか金賞受賞」といった食品を見かけます。日本の農家さんが育てる農産物は金賞どころじゃなく「ダイヤモンド」ですよ。それくらい世界的に見ても安全でおいしい。農業は、人間が生きていく上で一番大事な根幹の部分。そいだりなくしたりすればこの国はつぶれます。絶対になくしてはいけない仕事なんです。
テレビ番組を通じて全国の取れたて野菜や農家さんの手料理を味わってきました。もともと野菜が得意ではありませんでした。「俺は野菜が苦手なんだよ」なんて言ってましたが、食べてみると、なんておいしいのでしょうか。やはり野菜は生き物なんです。農家さんは野菜に命を吹き込んで栽培していると分かった途端、食べられるようになりました。
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農家さんから「人生」を学び直しました。ベテランだと思っていた農業歴70年近くの農家さんが「天候など状況が毎年異なるので、同じやり方じゃ育たない。農業は何十年やろうと1年生なんだ」と話してくれました。まさしく人生そのものだな、と。絶えず勉強に励むことが生きている証なんだと、改めて学ばせてもらいました。料理に対する考え方も変わりました。農家さんに作ってもらったホウレンソウ炒めは絶品だった。シンプルな味付けでベーコンと炒めて、最後に卵をかけてあえるだけ。素材の良さを生かした料理が一番おいしいと気付きました。脇役を上手に使い、真ん中の主役をもり立てる「お芝居」と全く一緒なんです。
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農業を応援したいという気持ちがあります。母親の故郷がリンゴ「ふじ」の一大産地・青森県藤崎町で、同町の「ふじりんごふるさと応援大使」を務めさせてもらっています。JAグループからは舞台公演の依頼が毎年あり、多い時は年間300~400本に上ります。JA向けに特別アレンジした現代劇を演じます。金銭の融通を目的とする昔の民間互助組織「頼母子講(たのもしこう)」が題材の人情劇で、大変好評です。今年も多数の公演を予定しています。
農家さんは「日本の食文化を守る」という強い使命感、人生で必要な「核」を持っていると感じます。こんなこと言ったら梅沢富美男らしいと言われるかもしれませんが、外国の野菜なんて食べられたもんじゃない。天候不良など困難も多いかと思いますが、農家さんが本当に頼りです。誇りを持って、これからも頑張ってください!

25年ぶりの食料・農業・農村基本法改正が予定されている2024年。日本の食や農の価値について、改めて考える年になる。著名人に食や農への思いを聞いた。