[天皇杯への道](3)畜産 森岡良輔さん、恵理香さん(鹿児島) データ基に健康管理 高い繁殖成績維持
直近の分娩間隔は11・6カ月で、全国平均に比べ1カ月半ほど短い。子牛の死亡も少なく、6年以上にわたり毎年、繁殖雌牛とほぼ同数の子牛を生産し続ける。
「父母から継いだ経営を素人の自分たちがやりやすいように変えてきた」と良輔さん。好成績を保つ秘訣(ひけつ)は、高度な技術でも高価な設備でもない。作業する人が誰でも分かるよう工夫した、牛の健康管理の仕組みにある。
母牛は①産後~妊娠鑑定②産前2カ月まで③分娩まで――と、ステージごとに分けて収容。監視舎にはホワイトボードを掛け、母牛ごとに種付け日や妊娠の有無、分娩予定日などを記す。牛ごとに現状を一目で把握でき、必要な作業が分かる。
母牛と子牛には血液検査を行い、数値で把握した栄養状態を基に、妊娠や生育のステージごとの飼料の給与量を決める。母牛の繁殖能力の回復を早めるため、子牛は生後5日齢で離乳させる。獣医師と相談し、子牛の月齢ごとにワクチンの接種計画も作成。子牛が残した草の量や治療歴まで欠かさず記録する。
良輔さんは元介護福祉士で2007年に親元で就農。栄養士だった恵理香さんは15年に経営参画した。親の代から繁殖成績には定評があったが、経営継承をきっかけに「経験と勘」から「データ」に裏付けられた管理に転換。経験に勝る両親と意見が違うこともあったが、夫妻は「血液検査の数値や記録を基に話し合うことで皆が納得して改善に取り組めた」と振り返る。
牛の更新も記録に基づき病歴などが少ない母牛系統から選抜。自家産のため借入金が少ない。更新期は10、11産が目安だ。長命連産で更新費用を抑える。
こうした経営努力で、子牛1頭当たり所得は33万6000円と平均的な農家に比べ6万円ほど高く、所得率は42・6%に上る。恵理香さんは「自信がないから記録に頼った。記録することで飼料の無駄もなく、誰が抜けても同じ仕事ができるようになった」と話す。
経営概況
夫妻と両親の4人で繁殖雌牛88頭を飼養。繁殖雌牛に与える粗飼料は11ヘクタール(借地を含む)の農地で自給する。家族経営協定を結び、良輔さんが母牛をはじめ飼養管理全般、恵理香さんが子牛育成や帳簿管理を担う。
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