22年農畜産物トレンド調査 「持続可能」へ移る商流 若者に訴求期待 「地産地消」も急伸
22年のキーワード(複数回答)は、今回新たに加えた「持続可能性」が49%で最多だった。持続可能な開発目標(SDGs)、倫理的な消費行動(エシカル消費)などが浸透し、「環境など社会の課題を解決する商品が選ばれる」(乳業メーカー)と注目度が高く、若い人にも訴求できるテーマとみる。「安さだけでは農産物の生産は続かない」(米穀店)と持続可能性のある取り組みで高付加価値化を探る業者もあった。
2位の「安全・安心」と5位「健康(機能性)」は共に上昇し、新型コロナウイルス下で健康意識が高まり、食品はより安全・安心が求められている。3位は「ネット取引・宅配」。コロナ下で利用が拡大し、勢いが続く。
4位は「安定(価格・数量)」。コロナ下で輸入食品が高騰し、調達を不安視。国内生産基盤の強化を期待する意見は多い。
6位は「地産地消・国産志向」。前年はトップ10圏外だったが急上昇。「生産者の顔が見える産品の消費が活発化し、ローカリゼーション(地域対応)が進む」(専門小売り)。
前回1位だった「新型コロナ対応」は7位に下落。オミクロン株流行でコロナ対応は長期戦になるとした見方が多かった。
8位は「物流」。人手不足やガソリン高騰によるコスト増などの課題から「新鮮な食品を届けるには物流網の確保が不可欠となる」(食品卸)。9位は「簡便・時短」がランクアップ。家庭需要が堅調な中で、調理負担を軽減したいニーズが高い。9位タイの「値頃感(節約志向)」は、景気の停滞を意識した回答が多かった。
12位の「おいしさ」は重要な要素であるが、国産品質の高位安定により年々、順位を落としている。15位は新設の「有機(オーガニック)」。注目の分野だが、国内生産量が少なく存在感はまだ低い。
[解説] 国産拡大こだわりを価値に
国産農畜産物が消費ニーズをつかむには流通業者との協業が欠かせない。業者の傾向を把握して消費実態に合わせた農業生産につなげる目的で、本紙は「トレンド調査」を15年間展開している。
国内の食品や花き産業は今、人口減少やコロナ禍、さまざまなコスト上昇と課題を抱える。景気も冷え込み最終商品への価格転嫁が難しくなり、従来の価格競争の戦略では行き詰まってきた。
今回調査の販売キーワードを見ると、「持続可能性」「地産地消・国産志向」の回答が多かった。国産農畜産物の「おいしさ」「安全・安心」といった長年かけて積み上げてきた強みを基盤として、さらに価値を上乗せできる材料を求めている。
農畜産物がどんな地域で、どのようなこだわりを持って生産されたかの情報や物語性は武器になる。農業の多面的機能や環境配慮の取り組みもアピール材料だ。
産地は流通業者との連携を高度化し、発信を強化すべきだ。製造や流通、中食・外食といった各段階で価値を高め、国産が消費者に選ばれるようにしたい。(宗和知克)
<ことば> 農畜産物トレンド調査
野菜、果実、米、食肉、牛乳・乳製品、花の6部門で実施。小売りや生協、専門店、外食、卸売業者などの販売担当者に対し、インターネットで聞き取り、昨年12月末までに約150の回答を得た。今年で15回目。キーワードは本紙が15項目を設定し、選んでもらう方式。