今こそ食料安保強化 本紙主催シンポジウム 戦火の影響を共有
シンポでは、キーウ在住の農業ジャーナリスト、ユーリ・ミハイロフ氏の緊急報告を公開した。関係者の証言から、農業生産や流通、貯蔵機能が甚大な損害を受けている実情が浮き彫りになった。
ミハイロフ氏は、年間約1億トンもの穀物・油糧種子を生産し、多くを輸出する欧州屈指の農業大国でも「食料安全保障が極めて脆弱(ぜいじゃく)であることを明確に示した」と強調。国内需給だけでなく同国の供給に頼るアジア、アフリカ地域で飢餓が深刻化するリスクも挙げた。
参加した識者は、行き過ぎた貿易自由化で輸入依存の反動にさらされる日本の危うさを指摘。その上で食料と資源を確保できる仕組みを再構築すべきだとの提言が相次いだ。
農中総研の平澤明彦基礎研究部長は欧州連合(EU)を例に、農業生産基盤強化に向けた施策の拡充を提言した。財源確保の理解醸成へ「農業界にとどまらず広範な国民合意が必要だ」とした。
食料安全保障推進財団の鈴木宣弘理事長は、新自由主義が「有事の局面で国民の食を賄えない、という論理破綻に気付くべきだ」と指摘。国産振興を前提に中長期的な食料危機リスクに備える必要性を強調した。
日本生協連の二村睦子常務は「農業が置かれている実情を多くの消費者が共有すべきだ」と訴え、持続可能な生産基盤の確立を国民挙げて支える仕組みを提言した。
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