[論説]国内肥料原料の活用 連携し安定供給めざせ
化学肥料は原料の多くを海外に依存し、国際市況や原料産出国の輸出動向に影響を受けやすい。秋肥の価格は下がったが、高騰する前に比べれば依然、高水準。将来にわたり確保できるかは不透明だ。
このため、堆肥など国内の資源を生かして化学肥料の使用を減らすことは、生産コストの削減や食料自給、持続可能な農業の実現に通じる。
生産現場では、堆肥をより使いやすくする実証が始まっている。農水省の事業などを活用し、堆肥と化学肥料を混ぜて混合堆肥複合肥料にしたり、堆肥をペレット化したりしている。これまでの耕畜連携に、肥料メーカーなどが加わったことで、堆肥を使う側にもメリットを生んでいる。
埼玉県のJA埼玉ひびきのは、地域の鶏ふんを使った混合堆肥複合肥料を試す。管内の大規模な養鶏業者や肥料メーカーと連携。試験する肥料は、鶏ふん堆肥が原料の45%を占め、肥料成分は窒素12%、リン酸5%、カリ5%を保証する。秋に種まきする来年産小麦では、40ヘクタール分に使う予定で実証は本格化する。
堆肥や肥料のペレット加工も進む。京都府内では耕畜連携で、鶏ふんを原料に尿素などを加えて栽培に適した窒素量にした肥料を粒状のペレットに加工する試みが始まった。散布する際、臭いや粉じんが抑えられ、高価な堆肥散布機も不要だ。ペレット化は、堆肥を広域流通させる上でも利点が大きい。
一方、下水汚泥からは肥料原料のリンが回収できる。神戸市や福岡市などが取り組む他、7月には横浜市とJA横浜、JA全農かながわが、再生リンの肥料利用を進める連携協定を結んだ。市は施設を新設してリンを回収・供給。全農かながわは肥料の製品開発を担う。JAは再生リンを配合した肥料の試験や流通、普及に動く。花やキャベツなどから試す予定だ。
国内の肥料原料の活用には、原料供給する事業者と肥料の製造業者、利用者の連携が欠かせない。農水省は3者のマッチングやネットワーク化を推進。それぞれが役目を果たすことで廃棄物が資源になり、肥料の製造・販売に新たな商機が生まれ、生産現場では安定した価格と品質での調達が可能になる。
こうした3者連携を増やすとともに地域での実証を重ね、安心して使える肥料の安定供給につなげよう。