もともと牛の生産には旬があります。例えば、牛の一大生産地の一つであるオーストラリア北東部では、乾燥した冬が終わって春になると雨が降り始めます。すると牧場では一気に青々とした牧草が育ちます。その季節を見計らったように母牛は子牛を生み母乳を与えます。しかし、いつも牧草がふんだんにあるかというとそうではなく、牛飼いたちは牧草があるところを求めて牛の群れを長距離移動させます。あるいはその場にとどまる場合は、乾季に備えて乾牧草やサイレージを作り、穀物を貯えて牛に給餌します。
そうすることによって自然に「牛肉の旬」は分散されていきます。もっとも、私たちのメイン食材の一つである牛肉がある時期(例えば秋だけ)しか生産されないとなると、と畜場で働く人は仕事にならないし、私たち生活者も困ることが出てきます。その結果、牛肉は通年生産となり、旬というものは自然となくなります。食肉にとって定時定量・一定品質は大変重要なことです。
一方、四季がはっきりしたわが国では、生活のどの場面でも季節感が大切になります。そのため、お肉屋さんでは売り場や料理提案などで季節感を演出します。例えば、暑い夏は涼しげなトレーに焼肉用を提案し、寒い冬には暖色系のトレーにすき焼きや鍋物を提案したりします。そろそろ季節の変わり目ですから、スーパーやお肉屋さんの売り場も変わってくるかもしれません。
公益社団法人全国食肉学校
総合養成科第23期卒業
専務理事学校長
小原和仁