芋煮戦争はさすがに冗談半分だが、それに近いシチュエーションを体験したことがある。私は東京生まれの東京育ちだが、大学だけは仙台。当時私が入っていた大学寮は看護学校の女子寮と交流があり、秋には皆で芋煮会をするのが恒例だった。ちなみにこの交流がもとで付き合いはじめ、結婚に至ったカップルが私の同学年だけで2組もいる。私には縁のない話だったが…。
閑話休題。その芋煮会で、鍋を3つ作ることになった。1つは山形風芋煮、もう1つは仙台風芋煮ですぐ決まったが、3つ目をどうするかで揉めた。特に看護学校の女子生徒は地元仙台出身者と同じくらい山形県人もおり、最後の鍋をどちらの味にするか決められなかったのだ。
で結論から言うと、最後の鍋は「しょうゆ油+みそ味の牛豚両入れ」という、山形仙台合体芋煮になってしまった。半ばヤケクソで作った鍋だったが、実際食べてみるとこれ、意外とうまい。考えてみるとみそもしょうゆも大豆発酵食品なのだから、相性の悪いはずがない。
このときの経験を生かし?当店でモツ煮を作る際は、みそをベースにしつつしょうゆも足している。みそ8しょうゆ2くらいの割合か。みその複雑な旨みにしょうゆの味で芯が通り、なんと言うか、味の輪郭がクッキリとする。ぜひお試しください。

公益社団法人全国食肉学校総合養成科第49期卒業
(有)岸商店(精肉店・東京都品川区)店長
五十嵐達雄