私はお酒が好きだ。特に近所の中古酒販売店で珍しいお酒を探すのが好きだ。今回は肉にまつわるちょっと変わったお酒を2つ、紹介しよう。
鮮やかな肉のラベルが目を引く米焼酎「29」
1つ目はラベルの肉の絵が目を引く米焼酎、その名もズバリ「29」。日本酒で名高い京都伏見の玉乃光酒造が作る米焼酎で、見た目の通り肉料理に合うよう作られている。重厚な屋久杉の樽香をまとい、味はあくまでドライで端麗。肉の脂っこさを打ち消しつつ、その旨みを引き出してくれる。水割りソーダ割りロックetc…肉料理の食中酒に最適な一本だ。ちなみに名前の読みは「にく」ではなくあくまで「にじゅうきゅう」。ラベルの肉の絵はシャトーブリアンで、よく見ると右下の霜降りが日本列島っぽい模様になっており、和牛を連想させる。芸が細かい。
日本では珍しいアルゼンチンのウイスキー「ブリーダーズチョイス」
2つ目はアルゼンチンのウイスキー「BREEDER'S CHOICE」(ブリーダーズチョイス)。まずはラベルに注目。3匹の牛が名前と年号入りで描かれているが、これらはアルゼンチンの畜産に深く関わっている。本コラムの第54回「アルゼンチンとの交流」にあるように、アルゼンチンは世界有数の牛肉生産&消費大国。この3匹はその礎となった種牛なのである。左の牛が1823年に導入されたショートホーン種の「タルキーノ」。右が1862年にやってきたヘレフォード種の「ナイアガラ」。真ん中が1879年導入のアバディーン・アンガス種「ヴィルトゥオーゾ」。どれも英国原産の種牛だ。アルゼンチン人の牛に対する関心の深さ、こだわりを感じさせるウイスキーといえる。
さてこのブリーダーズチョイス、日本には正規で輸入されておらず、入手は困難。私が手に入れた物も、中国への輸出品をどこかの旅行者がお土産として日本に持ち込み、それが中古酒販店に流れたというもの。そこまでの珍品ならぜひ飲んでみたいという人もいるかもしれないが…ぶっちゃけ、味は平凡なスコッチって感じでした。地球の裏側アルゼンチンの草原に思いをはせつつ、気軽に頂きますか。
公益社団法人全国食肉学校 総合養成科第49期卒業
(有)岸商店(精肉店・東京都品川区)店長
五十嵐達雄