[論説]果樹カメムシ猛威 適期防除で被害防ごう
果樹カメムシは、各地に分布する。今年は暖冬で乾燥した気候が続いたため、越冬した個体が多い。餌となるヒノキや杉の果実が、昨年は豊作だったことも多発につながった。産卵量も多く、今後さらに増える懸念がある。徳島県では、予察灯で誘殺したツヤアオカメムシが平年の46倍に上った。県立農林水産総合技術支援センターは「2000年以来の多さ」として産地に警戒を促している。
西日本の産地では、桃の収穫期を迎えたが、果実の甘い汁を吸うカメムシの影響で収量が大幅に減っている。5月に異例の防除や袋掛け作業をした桃農家もあったが、作業が追いつかずに収量が減り、手取りが減少する可能性がある。農家からは「こんなにカメムシが多いのは初めて」といった驚きの声が相次ぐ。
東日本の産地も危機感を強めている。千葉県のビワ農家は「いつもは1重の袋だが、今年は薬剤入りの2重の袋をかけたのに、奇形果が発生してしまった」と嘆く。
かんきつにも影響が出ている。山口県では、晩生の「南津海」の実を中心に被害に遭った農家がある。カメムシが果実を吸汁すると、落果してしまう。昨年の猛暑で花の付きが減っているところにカメムシによる加害が重なれば、落花が広がり、結実数の落ち込みが懸念されると、山口県柑(かん)きつ振興センターは指摘する。
対策はあるのか。坂本哲志農相は、会見で「果樹カメムシ類のまん延防止には、飛来の時期や量に対応した適時・適切な薬剤散布が重要。発生状況を注視し、防除を徹底してほしい」と呼びかけた。
鍵は、防除のタイミングだ。各地の病害虫防除所は、カメムシは夜行性であることから、夜明け前や日が暮れた後に防除するよう促している。ただ、度重なる防除や袋掛けで例年にも増して農家の負担は増している。酷暑下の作業で熱中症のリスクも増す。
減収分を補完する果樹共済の加入率は全面積の11・7%(22年産)にとどまり、所得が増えない中では加入するのも難しい。果樹共済や収入保険の加入促進へ、政府の支援も必要ではないか。
温暖化の進行で、今後もカメムシ被害が増え続けることが想定される。薬剤や資材の開発など研究機関やメーカー、行政などが一丸となった対策が求められている。