[論説]各地で相次ぐ大雨 早めの避難で命守ろう
今年は梅雨に入ったとたん、西日本を中心に警報級の大雨となっている。滋賀県米原市は1日、土砂災害が発生し、緊急安全確保を発令した。前線は今後北上し、北陸から東北にかけて大雨が予想される。
秋田県では2023年7月、記録的豪雨で農作物被害が8000ヘクタール近くに及んだ。農林水産関係の被害額は138億円に上った。死者も出た同県五城目町は22、23年連続で水害に遭った。「先祖から受け継いだ大切な農地だが、離農して引っ越したい」と漏らす農業関係者もいる。町は農地と水路計7カ所の復旧がまだ進んでいないという。
22年7月には宮城県でも記録的豪雨が発生、農業や暮らしに深刻な影響を与えた。同県大崎市古川を流れる名蓋(なぶた)川が過去3回も決壊し、住民はこれまでも治水対策を行政に強く訴えてきたが、途上で水害が襲った。それだけに、水害は「人災」とみる住民もおり、命を守る水路などのインフラ強化を求めたい。
秋田県五城目町の農事組合法人山ゆりは川沿いで営農する。昨年の水害で大豆畑1・7ヘクタールが水没し、収穫が全くできなかった。同法人の伊藤武志代表は「農地の近くを流れる河川は27年度に治水工事が完了するというが、1年でも半年でも前倒しで工事を終えてほしい」と訴えた。
治水対策が不十分なまま「今年も水害に見舞われるかもしれない」と地元農家は不安を抱える。一刻も早い工事の完了が必要だ。同時にこの時期は毎日の気象情報に注意し、過信せず早めの避難を心がけよう。
鹿児島県では6月21日、今年初の線状降水帯が発生、南九州を中心に河川のあふれや土砂崩れなどの被害が相次ぐ。温暖化で海面水温の上昇が続き、豪雨の引き金になっている。今後も水害は多発する恐れがあり、避難所や非常用品の確認など、まずは自らの命を守る対策を徹底しよう。
梅雨前線は8日にかけて本州付近に停滞する見込み。4日ごろには東北や北陸で警報級の大雨の恐れがある。これまで雨量が多かった地域では災害が起きやすくなっているだけに、厳重警戒が必要だ。
農村は高齢化が進んでいる。治水対策などの農業インフラの復旧が遅れるほど離農は進み、農家の減少に拍車がかかる。対策を急いでほしい。