[論説]国際協同組合デー 学びと実践で一歩前へ
国際協同組合デーは今年で102回。協同組合は今、大きな転換期を迎えている。その役割に国際的な注目が集まる一方、原則などの見直し協議が進む。日本のJAグループも例外ではない。
国際協同組合同盟(ICA)が提起した「協同組合らしさ」の深化に向けた議論が本格化している。加盟各国は現在、1995年に定めたICA声明(定義・価値・原則)を時代や社会の変化に合わせ検証し、改訂の有無を協議している。
これを受け、日本協同組合連携機構(JCA)は、各地で学習活動を重ね、今年3月に提言をまとめた。原則にある「地域社会への関与」を協同組合の定義に明記することなどを求めた。いわれなき農協攻撃に対抗し、地域に根ざすJA総合事業の役割を位置付ける上でも重要な提起だ。見直し作業は、早ければ今秋にもICAから方向性が示され、来年の総会に付議される可能性がある。
もう一つの潮流は、国連が2012年に続き、来年を2回目の「国際協同組合年」に定めたことだ。30年にゴールを迎える「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現に向け、協同組合の貢献と役割を高く評価したことの証左だろう。多くの社会課題の解決に、その存在が不可欠なのは言うまでもない。日本では9日、幅広い協同組合セクター、市民団体などによる全国実行委員会が発足し、IYCに向け動き出す運びだ。
今年の国際協同組合デーは、協同組合らしさを学び直し、来年の国際年に向け意思結集する好機となる。JCAの山野徹会長(JA全中会長)は、「学び・実践・発信」を通じて、持続可能な社会づくりに一歩踏み出そうと呼びかける。
協同組合の原点や今日的な意義が、役職員、組合員にどれほど共有されているのか。若手職員の離職、不十分な女性管理職の登用、組合員離れなど、理念と現実の乖離(かいり)が顕在化しつつある。かつて協同組合に対して指摘された「信頼性の危機」「経営の危機」「思想の危機」は今に通じる重い課題だ。
この日を単なるセレモニーにしてはならない。JAがよって立つ基盤は何で、誰のための組織・事業なのかを再確認しよう。そして目指すべき農業、農村像を明らかにし、何をなすべきかを役職員、組合員で考える契機としたい。