[論説]夏休み中の食支援 「協同の力」発揮しよう
認定NPO法人「キッズドア」が6月にかけて実施した、主に世帯所得300万円未満の家庭を対象にしたアンケートによると、物価高が続き、昨年同時期と比べて家計が「とても厳しくなった」という回答が約8割に上った。1人当たり月1万円未満(1人1食110円程度)の食費で暮らす家庭は、3人家族で4割強を占めた。子どもの成長や健康への悪影響も現れており、所得が低いほど「体重が増えていない」「身長が伸びていない」「病気にかかりやすくなった」などと答える割合が多かった。
酷暑下の夏休みは、エアコンなど光熱費も家計を圧迫するため、食費を抑えがちだ。経済格差は、子どもの未来を左右する。岸田首相の唱える「異次元の子育て政策」はどこへいったのか。今こそ、こども家庭庁が主導し、夏休み中の子どもたちの食を支え、健康を守る必要がある。
困窮世帯の親子が頼りにするのは、民間のフードバンクや子ども食堂だが、こちらも物価高の影響で運営資金や寄付の減少で課題を抱えている。そうした中、各地のJAが食料支援に乗り出している。
JAグループ和歌山は、2022年度から「愛をコメてプロジェクト」を始動させた。県内役職員が専用袋に精米1合(142グラム)を詰めて持ち寄り、フードバンク和歌山へ提供している。県内JAが毎月順番に実施する仕組みで、今年7月までに提供した精米は累計1万2201合(約1・7トン)に上った。一人一人が持ち寄る量はわずかでも、組織として動けば一定量の安定供給を実現できる。これが協同の力だ。
JA兵庫西は7月から、JAの農園で収穫した農産物を毎月、地元の子ども食堂へ提供する。石川県のJA小松市はおいしく食べられるのに売れ残った野菜を、滋賀県のJAグリーン近江は伝統野菜の「日野菜」を、それぞれ地元の子ども食堂へ提供し始めた。
こうした活動は、子どもたちの体に必要な栄養を補うだけではなく、地元で取れた米や野菜を地元の子どもたちが食べることで地産地消も実現する。あまり目にしない伝統野菜が食卓に上れば、食農教育にもつながる。食を支えてくれる地域の農家や農業、JAへの理解も進むだろう。
子どもたちの未来を照らすのは大人の使命だ。食と農を守るJAが先頭に立とう。