[論説]与野党の党首選 農林予算増を実現せよ
一連の自民党の「政治とカネ」問題を巡る対応が、今回の争点となるが、再調査や、政治資金収支報告書に不記載があった議員の処分見直しなどについて、踏み込んだ議論が行われているとは言えない。自民党から議員に支給される「政策活動費」の扱いなどを含め、党や政治改革へのビジョンを明確にすべきだ。
衆院解散で有権者の審判を受ければ“みそぎ”が終わるわけでもない。政治改革はこれまでも行われてきたが、法律には抜け穴があり、繰り返し「政治とカネ」の問題が噴出してきた政界の土壌そのものを変える必要がある。
総裁選では、労働市場を含む「規制改革」が論点の一つとして浮上しているが、各候補者は持論の展開に終始しており、農業分野への規制改革について具体的な言及はなく、方向性は見えない。
農業は、安倍政権や菅政権での新自由主義による農政・規制改革の結果、環太平洋連携協定(TPP)が締結され輸入自由化は加速、国内の生産基盤の弱体化が進んだ。官邸主導による規制改革で、再び農業がターゲットとなれば、食料安全保障の確保は危うくなる。規模の集約化やスマート農業の推進などは必要だが、中山間地域を含めた農業・農村の実態と懸け離れた改革は避けるべきだ。
改正食料・農業・農村基本法では、農政の本丸となる食料安保の確保という大命題が明記された。肥料や飼料、燃油などの生産資材高騰対策、農畜産物の適正な価格転嫁問題、新規就農者数の減少を含めた担い手対策、中山間地域を中心とした農村の振興、みどりの食料システム戦略の推進、米政策の抜本見直しなど課題は山積みだ。
昨今の農林水産関係予算は、3兆円台を下回る水準が続き、食料自給率もカロリーベースで38%と低迷する。一方、防衛予算の大幅な増額方針は明示されている。安全保障の両輪となる食料安保の予算増を求めたい。
未来にわたって安心して農業を続けていくためには、農業所得の向上は欠かせない。それを実現させるのが、政治の役割ではないか。
自民総裁選、立民代表選ではぜひ、持続可能な農業・農村政策をどう進めていくのか、具体的な議論が必要だ。両党の新党首は政策手法とセットで、財源確保の道筋を示してほしい。