[論説]鳥インフルへの備え 早期侵入に警戒強めよ
農水省によると、23年度の高病原性鳥インフルエンザの感染状況は、鶏などの家禽は10県11事例、殺処分は86万羽と、近年で最も少なかった。過去最多の22年度は、感染は26道県84事例に広がり、殺処分は1771万羽に上った。
一方、ウイルスに感染した野鳥は、23年度が28都道府県で156事例と、22年度の28道県242事例に次いで多かった。流行期を迎える今季も、世界で感染の報告が相次いでおり、油断はできない。
同省は24年度も、国内にウイルスが侵入するリスクは極めて高いとして、10月から来年5月までの警戒を強化する。特に、11月から1月までを重点対策期間と位置付け、対策の強化を呼びかけている。
今年は9月下旬になっても最高気温が35度以上の猛暑日を記録した。気象庁によると10月も全国的に平年より高い気温が予想されている。台風の発生も相次いでおり、防鳥ネットと鶏舎の隙間などを見回り、修繕するのも大きな労力がかかる。
ただ、11月以降は気温が平年並みになる見込みで、短い秋の後に、平年通りに冬を迎えると見込まれる。その結果、夏のような気候から秋、冬へと一気に季節が進み、渡り鳥の動きが一斉に始まる可能性がある。本格的な飛来シーズンに入る前に、万全な対策を急ごう。鶏舎や飼料置き場、堆肥舎などの防鳥ネットをいま一度点検するとともに、ウイルスを運ぶネズミの定期的な駆除に取り組もう。
従業員と作業手順を改めて確認することも重要だ。衛生管理区域を出入りする際の車両や手指の消毒、専用の衣服や長靴への交換で、農場へのウイルス侵入を防ぐ。鶏舎の出入り口でも、手指の消毒と専用の長靴への履き替えで、ウイルスが家禽に感染するのを食い止めよう。
国連食糧農業機関(FAO)は7月、アジア太平洋全域で「H5N1型」ウイルスの感染が増加しているとして緊急的な対応を呼びかけた。人への感染についても、米疾病対策センター(CDC)が9月上旬、ミズーリ州で初めて感染動物と接触した履歴のない感染者が見つかったと発表した。治療後に回復したものの、注視すべき状況だ。
飼料や資材価格は依然として高水準で推移し、万一、農場で鳥インフルが発生すれば、経営に与えるダメージは大きい。対策を徹底しよう。