[論説]石破内閣が発足 課題山積 農政で結果を
石破氏は2008年の麻生内閣で農相に就任。農地法改正や米の生産調整の見直しを手掛け、農政通として知られる。官房長官には農相経験者の林芳正氏を再任、農相には首相補佐官を務めた小里泰弘氏が就いた。石破氏は自民党幹事長だった13年、農林部会長だった小里氏と共に「農業・農村所得倍増目標10カ年戦略」を策定した。農相だった林氏とも連携し、政府の成長戦略に明記した。
今回も同じメンバーが閣内に入り、政権運営に直接携わることになる。あれから10年以上たつが、農業・農村の所得倍増は道半ばだ。今度こそ結果を残すべきだ。
一方、自民党役員人事では農政の重鎮、森山裕氏を幹事長に起用。幅広い人脈を持ち、調整力にたけた森山氏に難しい党の取りまとめを託した形だ。政策を取り仕切る政調会長には党農業基本政策検討委員長を務めた小野寺五典氏を起用し、強力な農政の布陣にしたと言える。
来年3月には、農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の改定が控える。小里氏は農相就任に当たり、食料安全保障の強化に力を注ぐ考えを示した。水田政策の見直しや生産コストの価格転嫁、高齢化が進む農村振興など難しい課題が山積するが、しっかりと結果を出してほしい。
農政の推進には、その裏付けとなる財源確保が欠かせない。自民党総裁選では石破氏を含め多くの候補が、農業予算の増額に意欲を示した。新たな基本計画がスタートする25年度の予算編成は、石破・小里農政の試金石となる。
石破首相は、自民党総裁選で「臨時国会でしっかり与野党の論戦をした上で信を問う」との考えを繰り返し表明していた。だが、そうした主張を翻し、早期に衆院を解散し15日公示、27日投開票の日程で衆院選を行うと表明した。選挙戦略に加え、年内の補正予算の編成などもにらんだ判断とみられるが、総裁選時に明言したことをただちに覆せば、国民の信頼を損ねる。
岐路に立つ水田政策をはじめ、地震と豪雨に見舞われた能登の農業復旧など、石破政権が目指す姿はまだはっきりしない。選挙前に農政の方向性をきちんと提示し、農家・国民に問うべきだ。立憲民主党をはじめとする野党も、政府・与党に対峙(たいじ)する農政の選択肢を示し、しっかりと論戦に臨んでほしい。