[論説]生協の下請法違反 不公正な取引の根絶を
公取委によると、同生協連は昨年から今年にかけて、PB商品の製造を委託していた食品メーカー5社に対して、特売の他、商品の仕分けや配送費用の名目で、下請け代金から計約2770万円を不当に差し引いていた。
下請法は、業者側に責任がないのに、発注時に取り決めた代金を減額することを禁止している。公取委の調査後、同生協連は減額分を5社に返金した。同生協連は9月に勧告を受け、組合員に対しては、特売は取引先と「事前に確認していた」、仕分けや配送費用については「システムの不備」などと説明。現在は、問題とされた取引形態を廃止したとしている。「共生の社会」を理念に掲げる同生協連は、生産現場と生協組合員をつなぐ活動や、生産者の再生産可能な価格実現に力を入れてきた。こうしたことで信頼が損なわれるのは残念だ。
5月には、生協のコープさっぽろも下請法違反で勧告を受けた。PBの食料品の製造などを委託する27社に対し、リベートやシステム利用料などの名目で、総額約2500万円を代金から不当に減額していた。公取委は2012年にも同生協に同様の勧告をしていて、不当な減額で2度の勧告を受けたのは全国で初めてだ。こうした不公正な取引が今後も明らかになれば、協同組合としての存在意義も問われてしまう。
肥料や飼料価格の高騰が長引き、農畜産物や食品は、コストを反映した適正な価格形成が課題となっている。政府は来年の通常国会で、価格形成の仕組みの法制化を目指している。生産にかかった費用を明示し、買い手は対等な立場で価格交渉に応じ、費用を考慮した価格改定を検討する、という仕組みを想定する。費用を考慮した価格設定がされない場合、政府が指導・勧告することも盛り込まれる見通しだが、実効性が課題だ。
日本商工会議所の中小企業調査(8月)では、発注者との価格交渉で「買いたたき行為」を経験した中小企業は24%に上った。あらゆる業種・業界で、公正な取引と価格転嫁の実現は急務だ。
下請法を巡っては、農産物を含む運送にも適用することが検討されている。生協やJAをはじめとした協同組合は、下請法などの法令順守はもちろん、率先して取引先との価格交渉に応じ、公正な取引に努めるべきだ。