[論説]認知症との共生社会 理解深め“自分ごと”に
基本計画案は「新しい認知症観」を盛り込み、認知症になっても「できること、やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら自分らしく暮らし続けることができる」社会を目指す。
認知症の人を「支える対象」と捉えるのではなく、共に支え合って生きることが重要と指摘。認知症になったら「何もできなくなる」という誤解を解き、「できること」を尊重する。当事者の尊厳を守るため、基本計画を実効性あるものにしよう。
医療分野では厚生労働省が9月、米国の大手製薬会社が開発した新薬「ドナネマブ」の製造販売を承認した。脳に蓄積して神経細胞を傷つけるタンパク質を除去し、アルツハイマー病の進行抑制を狙う。エーザイなどが開発し、昨年実用化した「レカネマブ」に続く2例目だ。高価格や投与の煩雑さ、対象者が限られるなど課題はあるが、これまでアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける薬はなかっただけに、症状改善への大きな一歩と注目される。
こうした法整備や医療の進展に伴い、欠かせないのは私たち一人一人が認知症への理解を深めることだ。認知症と診断されれば、当人はもちろん家族は落ち込み、他人に気付かれないよう症状を隠してしまいがちになる。そんな時こそ孤立しないように寄り添い、受容し、思いに耳を傾けることが重要だ。
頼りになるのが、認知症の知識や接し方を学んだ「サポーター」だ。JAはこれまで約20万人を養成。現在もJAながのは9月、ライフアドバイザーを対象に、滋賀県のJAグリーン近江は7月に支店初の試みとして職員や女性部員を対象に、それぞれ養成講座を開いた。全職員がサポーターというJAも次々誕生し、事業所にサポーターの存在を示すポスターを掲示するなど、認知症の人に安心感を提供している。多様な分野でサポーターを養成し、認知症を支え合う輪を広げていこう。
サポーターの出発点は、認知症を正しく理解することにある。次のステップは、認知症の人と周囲との橋渡し役を担うことだ。紙芝居や寸劇で分かりやすく解説したり、認知症の人と地域住民が交流する「オレンジカフェ」を開いたりといった活動もある。認知症を自分ごとと捉えるためにサポーターの果たす役割は大きい。地域に根差すJAとして認知症の人と共に生きる社会づくりを目指そう。