[論説]米政策見直し 安定供給へ予算増やせ
農水省は10月30日の食料・農業・農村政策審議会食糧部会で需給見通しを示し、2025年産主食用米の適正生産量を24年産予想収穫量と同じ683万トンに設定。需給の判断材料となる6月末時点の民間在庫量は25年が162万トンと低水準だが、26年は182万トンに回復して業界が適正水準としていた180万~200万トンに収まる見通し。今夏は一時的な米不足で市場に混乱を招いたが、今後の需給は均衡に向かうとみられる。
米の需要を長期的に見れば、人口に連動した減少トレンドが続く。年1作で予期せぬ消費量や作柄の変動があれば、需給や価格に多大な影響をもたらす。需給の“帳尻合わせ”は、実質、翌年の作付け増減で対応するしかない。
米の政策は全体需給のバランスを取ることに注力してきた一方、将来への展望が欠けていた。基幹的農業従事者の減少とともに高齢化は加速する。担い手への集約が進むと同時に、農家1人当たりが支える消費者人口も増加している。気候変動や自然災害、病害虫などのリスクは増大。肥料・農薬といった物財費は高止まりし、労働費も上昇する。生産性向上へ農地の集約・大区画化は必要だ。全国の水利施設やカントリーエレベーターなどの共同利用施設は、老朽化から更新が急務となっている。
米を生産するコスト増加は必至だ。長らく低迷していた米価は24年産で上昇したが、反動で再び下落する懸念は残る。再生産に必要な費用を踏まえた適正価格の形成はますます重要となる。
政府は、基本計画の策定作業に合わせ、27年度以降の水田政策を見直す。衆院選では水田政策について与野党が独自の主張を展開し、現行政策を巡る問題を提起した。今夏の米騒動を踏まえ、米の増産を訴える党が少なくなかったが、余剰米対策や米価下落時の所得補償の財源など言及が足りない部分が目立った。現状4万トン程度にとどまる米の輸出に需給調整を委ねるのも現実的でないだろう。麦・大豆などの転作助成を含め、水田政策の安定運営はさらに重要性を増す。
財源問題とも向き合わなければならない。米の需要減少に伴い膨張する転作助成は持続可能ではないとした認識が政府に広がる。まずは財源不足の実態を広く開示した上で、議論を深めるべきだ。それでも足りない予算は、国民に理解を呼びかけて増額を実現していきたい。