[論説]訪問介護の倒産最多 支え合いへJAの出番
東京商工リサーチによると、上半期(4~9月)の介護事業者の倒産は95件。介護保険制度が始まった2000年度以降、上半期として最多を更新した。中でも訪問介護の倒産が46件と最多に上る。24年度からの基本報酬の減額が一因とみられる。
報酬減額は、厚生労働省が22年度の経営実態調査を基に、訪問介護事業所の平均利益率7・8%が、介護サービス全体の同2・4%を上回り「高い」と判断したからだ。
だが、この見方には異論も多い。サービス付き高齢者向け住宅に併設し入居者を訪問する事業所は、短時間で複数箇所を効率よく回れるが、地方では一軒一軒家庭を回る場合が大半で、移動にかかる距離や時間、ガソリン代を含めてコストはかさむ。農村地域にあるJAの訪問介護ほど負担は重く、国は地域の各事例を分析し、実情に見合った適正報酬を算出すべきだ。
加えて、在宅介護の存続には地域住民同士の支え合いを強化する必要がある。季節などに応じて高齢者の体調は変わりやすく、要介護・要支援と元気な時を行ったり来たりする。
公的介護保険事業の他、心身を健全に保つ介護予防活動などを展開するJAの出番だ。JA北大阪は10月、組合員の健康寿命を延ばす「健食健歩会」を発足した。65歳以上を対象に、要介護状態の前段階であるフレイルを予防する。関連企業と連携し食事、運動、社会参加に向けた活動を無料で提供する。費用の負担なく高齢組合員の健康を支える新たな動きに期待したい。
交流の場となるカフェの運営も盛んだ。JAレーク滋賀守山野洲支部中主地区まごころグループは4月、初めてカフェを開いた。JA秋田しんせい助けあいグループも同月、初のカフェをオープン。気軽に立ち寄れるようにと年金受給日に合わせ、支店内に開設した。「来店ついでにお茶を飲みながらくつろげる」と好評だ。職員、グループ員とも「高齢者がJAに行く楽しみの一つにしたい」と意欲を見せる。誰もが立ち寄れる場づくりは暮らしを豊かにし、心身の健康につながるだろう。
年を重ねても安心して過ごすには、公的制度の充実と地域での支え合いが欠かせない。懸け橋となるのがJAだ。地域になくてはならない存在として、存分に役割を発揮しよう。