[論説]令和の米騒動 家庭で回転備蓄促そう
今夏、全国各地のスーパーの店頭などで米が品薄になった。新米が出始め落ち着いたが、価格も上がった。四半世紀ぶりに改正された食料・農業・農村基本法は、「国民一人一人の食料安全保障」を基本理念の中心に置く。令和の米騒動で、改正基本法は出ばなをくじかれた形となった。
米の品薄は、猛暑による23年産米の不作の影響や、訪日外国人の急増、8月の南海トラフ臨時火山情報(巨大地震注意)の発令で購入が増えたことなどが原因とみられる。野党からは備蓄米を放出するよう求める声も上がり、政治問題化した。
生産者やJAは、異常気象の中でも安定供給に努めてきた。肥料などの資材費が高止まりする中、米の価格高騰で一層の消費離れを引き起こす恐れがある。それは、産地として望むものではないはずだ。取引価格の乱高下は株などの投機目的ならともかく、好ましいとはいえない。
農水省が先月30日に開いた食料・農業・農村政策審議会食糧部会で公表した米不足の検証結果によると、7月までは前年と同等か、それ以上の供給があったと分析する。だが南海トラフ地震臨時情報により、小売り段階での販売価格が前年同期比2~4割を超えて上昇。同省は「品薄を伝える情報が広まることによる影響が大きかった」ため、米の供給が追い付かなくなったと指摘した。巨大地震に不安を感じた消費者が買いだめに走った、と総括しているようにも受け取れる。
農水省は今後の対応として、6月から新米が出回る前の9月中旬まで、米の集荷量や販売量を週ごとに調査する方針を示した。情報は消費者にも分かりやすいように発信する。不安を与えないようにとの配慮だろう。民間在庫が少なく、市場の値動きに、敏感に反応しやすいためだ。
行政は行政でやるべきことがあるが、生産者側としては安定供給に努める他にも、家庭での回転備蓄を呼びかけたい。需給の緩衝機能を強めていくことが肝心だ。
農水省がまとめた「災害時に備えた食品ストックガイド」によると大人2人の1週間分の回転備蓄量は米2キロを2袋。稲作農家なら家に米があるのは当たり前だが、各家庭で備蓄が常態化すれば、突然のパニックや買いだめは起きにくい。直売所などでは備蓄の大切さを伝えていこう。