[論説]健康寿命延ばす生き方 社会活動で仲間作ろう
先月の「第13回健康寿命をのばそう!アワード」(介護予防・高齢者生活支援分野)で、NPO法人「JAあづみくらしの助け合いネットワークあんしん」(長野県)が、厚生労働大臣最優秀賞を受賞した。JA関連組織では初の受賞となった。
同法人の活動は、自給力を高める畑での生産や加工品作り、直売、学校給食への食材提供、自治体と連携した生活支援サービス、セミナーでの学びや実践の場づくり──と幅広い。地域のあちこちで“小さな協同活動”を展開し、それぞれ違うリーダーが活躍する。
今回の受賞では、「健康づくり」「仲間づくり」「生きがいづくり」「地域の文化づくり」の場となっている主体的な活動が高く評価された。
同法人の会員は事業運営と支援活動に携わり、助けが必要になったらサービスを利用する仕組みも特徴的だ。池田陽子理事長は「介護保険制度に頼るばかりでなく仲間と支え合い、地域で安心して暮らしていける道のりを充実させようと、活動を一つ一つ作り積み重ねてきた」と振り返る。
国立社会保障・人口問題研究所は11月、「日本の世帯数の将来推計」で1人暮らし世帯が20年の38%から、50年には44%となる見通しを発表。うち65歳以上が21県で5割を超えるとした。健康寿命を延ばす暮らし方を自分で形づくり、実践する重要性がますます高まっている。
同法人が12月に開いたセミナーで、早稲田大学の加瀬裕子名誉教授は「介護の担い手不足などで介護保険制度は危機にあり、地域によってはサービスが提供されない問題も起こっている」と指摘。このような状況下で、これからすべき備えとして①健康を保つ②心身の能力(機能)を保つ③仲間を持つ──ことを挙げた。
仲間づくりは社会とつながることに直結する。加瀬名誉教授が同法人に注目するのは、それぞれの得意分野で能力を発揮できる活動のデザインと、身軽で柔軟なネットワークだという。同法人の生活支援サービスのような活動が1人でも地域で暮らし続けることを支え、家族とは違う「新しい生活共同単位」になり得ると解説した。
楽しく関われる社会活動は、健康度を高めるために大きな役割を果たす。そして困った時に助け合い、支え合える関係性が地域力を高める。