[論説]特殊詐欺12月が最多 協同の力で被害防ごう
警察庁によると、特殊詐欺の認知件数は2021年は1万4498件、22年は1万7570件、23年は1万9038件と増加に歯止めがかからない。このうち12月の認知件数は21年1408件、22年1926件、23年1785件と各月と比べて突出している。師走を迎えて慌ただしさを増し、気がそぞろとなりがちなところにつけ込んでくる。
手口は多彩だ。親族などを装った「オレオレ詐欺」、税金が戻るといった「還付金詐欺」、未払いがあると嘘の口実を言う「架空料金請求詐欺」など、あの手この手で金品を要求する。警察庁は「注意するだけでは対抗できない」とし、まずは「犯人と話をしない」ことを対策のポイントに挙げる。不安を感じたら相談できる窓口や、消費者ホットラインを利用しよう。
それでも被害に遭ったり、被害に遭いかけたりした場合、肝心なのは当事者を責めないことだ。もちろん自身も責めてはいけない。だまされたことで既に心は傷ついているのに追い打ちをかけては、傷は深まるばかりだ。だます方が100%悪い。泣き寝入りせず被害について地元の警察に通報し、新たな被害者を生まないようにしよう。
JAも、ちらしや声がけなどの啓発活動を展開し、特殊詐欺対策に力を入れている。例えばJA大阪南は、職員のいないATMでの詐欺防止策として、新たに注意を喚起する3Dシートを設置した。ATMコーナーに入ると、足元のシートから「ちょっと待って! サギ!」などの文字が浮き上がる仕掛け。だまされて振り込むのを直前で防ぐ狙いだ。JA大阪東部は、広報誌の裏ページを活用して「還付金はATMでは戻らない」と掲載するキャンペーンを実施した。JA京都市の支店などでは窓口とATMに「暗証番号変更詐欺にご用心」の表示を掲げ、警戒を促している。
こうした対策に加え、心強いのが職員の“気付く力”だ。来店者がATMで携帯電話を片手に不審な動きをしていたり、急に高額な貯金の解約を求めたりした時に、いち早く詐欺の可能性を疑い、警察へ通報、被害を防いだ事例は多い。日々の研修を重ね、組合員・地域住民に寄り添った接客をしているたまものだ。大切な財産を一瞬でだまし取る卑劣な特殊詐欺を、協同の力で食い止めよう。