[論説]与野党伯仲国会の審議 農家所得増へ合意探れ
日本の食料自給率の長期低迷や農家戸数、耕作面積の減少に歯止めがかからなくなっている原因を突き詰め、持続可能な食料安全保障を確立できるのか。臨時国会では、これまでの農政の効果を検証する必要があるとの指摘が相次いだ。石破首相も4日の衆院予算委員会で、「日本が世界の中で食料自給力、自給率、それが突出して低いというのはやはり相当な問題なのだろうと思っている」などと述べ、危機感を示した。
だが、議論が深まったとは言えない。現行施策の検証や諸外国の事例の研究を含めて、対応は待ったなしだ。食料・農業・農村基本計画見直しの時期でもあり、与野党は農家手取りを増やす具体的な道筋についてもっと踏み込んだ論争を展開してほしい。
とりわけ、違いが目立つのが、直接支払いを巡る議論だ。立憲民主党や国民民主党などは、戸別所得補償制度の名称をあえて使わず、直接支払制度の見直しという観点から提起を始めている。石破首相や自民党の森山裕幹事長が、水田政策などの検討の中で「直接支払いについて議論を深める」と語ったことに呼応したものとみられ、与野党双方が一致点を見いだす努力が求められている。
一方、石破首相は戸別所得補償制度を念頭に「(農家の)意欲にブレーキをかけるとか創意工夫に水を差すとか、そういうご意見があることは事実」とも述べ、与野党の主張には依然として差がある。
農水省は来年の通常国会に農産物の価格転嫁を後押しする法案を提出する予定だが、同法案を巡っては、納税者負担による直接支払いの是非について再度、論点として浮上するのは間違いないだろう。政府・与党が、従来の立場を繰り返すだけでは法案は宙に浮きかねない。各党の主張の隔たりを超えて、農家の手取り増を実現させるという石破首相の強いリーダーシップを期待したい。
与野党は、直接支払いを含めて手取りを増やすために必要な農林水産関係予算を確保した上で、山積する農政課題に正面から向き合うべきだ。
自民、公明、国民民主の3党は、いわゆる「103万円の壁」の見直しで合意した。どのように実施するか不透明な部分は残るが、石破首相が唱える熟議の成果だろう。農業の直接支払いについても、熟議の合意を求めたい。