[論説]子ども食堂1万カ所 運営支える法整備急げ
認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の速報値によると、現行の調査方式となった2018年度(2286カ所)以降、子ども食堂は爆発的に増え続けている。24年度は、過去最多だった23年度を1734カ所上回り、1万866カ所となった。これは、全国の公立中学校(9265校)1校区に1カ所以上、公立小学校と義務教育校(1万8740校)1校区の6割に存在している計算で、世界に類例のない事態と言えよう。
むすびえの推計では、子ども食堂利用者は年間延べ1885万人で、うち子どもは7割近い1299万人。増加の要因として、①「こどもまんなか社会」を掲げた「こども大綱」の閣議決定(昨年12月)②子ども食堂を支援する地域ネットワーク団体の活動が全都道府県に拡大③企業やJAなど各種法人による運営・支援の増加――を指摘する。
問題は、多くの食堂運営は依然としてボランティアや個人の力に依存していることだ。千葉県松戸市や和歌山県橋本市など一部の自治体は、条例に要綱を設けて支援するが、根拠となる国の法制度は未整備のままだ。このため、食堂のニーズは高まっているのに全てに応えるのは難しく、既存の食堂も財政的に厳しい運営が続く。民間主導で広がる子ども食堂を持続可能にする法制度の整備が急務だ。
日本で子どもの貧困が注目されたのは、厚生労働省の2009年「子どもの貧困白書」だった。子どもの相対的貧困率が「7人に1人」と、経済協力開発機構(OECD)の中で突出して高かったことは社会に衝撃を与えた。だが、最新の22年度調査でも「9人に1人」、ひとり親家庭では「2人に1人」と深刻さは変わらない。貧富の格差は広がる一方だ。
一方、韓国では「子どもの成長を支える食環境の充実は国の安全保障の根幹をなす」との考えから、学校給食を教育の一部と位置付け、22年に幼稚園から高校まで完全無償化が実現した。政府内に貧困家庭への補助で十分との意見もあったが「支援を受ける子に負の烙印(らくいん)を与える」と市民社会が反対した。日本は、子ども食堂がこども家庭庁、学校給食は文部科学省、有機食材の生産は農水省などと縦割り行政となっている。食を通して子ども政策を統合し、強化すべきだ。