[論説]続くランピースキン病 減収分の補填策万全に
同病は牛や水牛が感染し、全身に大小の結節(いぼ)が出るのが特徴。11月6日に同県糸島市の農場で初確認されて以降、県内では那珂川、福岡、朝倉各市へと発生が拡大。12月19日までに県内19農場、熊本県の2農場で確認され、感染牛は250頭を超える。
農水省は、発症牛を自主的に淘汰(とうた)した際の再導入や出荷自粛中の生乳の適切な廃棄処分への助成、ワクチンの無償配布といった現場でのまん延防止に向けた措置を相次いで講じてきた。日本政策金融公庫に対し、農林漁業セーフティーネット資金の円滑な融通や償還猶予を要請するなど、経営支援を続ける。
感染拡大を受けて福岡県は11月21日からワクチンの接種を開始。発生農場から半径20キロ以内にある農場が対象で、12月16日時点で延べ39戸、2039頭に接種している。
同病は、殺処分を伴う法定伝染病ではないため、家畜伝染病予防法に基づく防疫措置や手当金の給付はない。一方、農水省は今年1月に通知を出して、発症牛の生乳出荷と、発生農場からの生体牛の市場などへの移動自粛を求めており、農家の負担が生じている。
求めたいのは、減収分の補填(ほてん)だ。生乳を出荷できなくなった酪農家や、移動自粛に伴う影響で、子牛を適期に出荷できなくなった畜産農家もいる。出荷の時期を逃せばせり値は下がり、滞留した牛を飼養する餌代もかさむ。政府が生乳出荷と生体牛移動の自粛を求めるのであれば、現場の負担や不安を取り除く対策が不可欠となる。
加えて、同病の発生と侵入経路がいまだ不明であることは、周囲の畜産農家を不安にさせている。「自分の出荷した子牛で何かあったら」と懸念するあまり、せりに出すのを迷う農家もいるという。飼料高騰に苦しむ畜産経営にとって、同病の拡大が追い打ちをかけているだけに、一刻も早い原因究明と対策を求めたい。国による疫学調査の結果も、早急に示してほしい。
農水省は、ワクチンの重要性を指摘するが、ワクチンを接種した県から米国への牛肉輸出は12日から停止されることになった。国内ではワクチンを打った牛であることで、その後の扱いを含め、所得に影響があってはならない。同病による経営悪化で、離農がさらに進むことがないよう万全な対策を求めたい。