[論説]強い寒気の流入 除雪作業は安全第一で
気象庁は19日、早期天候情報を出し、年末年始にかけて東北日本海側から西日本にかけて低温と大雪になるとして注意を呼びかけた。車の立ち往生や、農作物にも影響が出る恐れがあり対策が必要だ。
気を付けたいのが除雪中の事故だ。消費者庁などによると2014年度から23年度までの10年間で、製品評価技術基盤機構(NITE)に通報された除雪機による死傷事故は38件。うち、約7割(25件)で死者が出た。
除雪機を扱う人は、農家が多く、事故の構図は農機事故と似ている。高齢になると握力が低下するため、操縦者が手を離すと除雪機が自動で止まる安全装置をひもで縛って固定し、装置が正常に作動しないケースもある。安全装置が働かなければ、重大事故に直結する。このような危険な行為は、絶対にやめよう。
同庁などは①安全装置を無効化する②電源がオンのまま除雪機から離れる③近くに人がいるのに機械を作動させる④回転式の「オーガ」(集雪口)に手を突っ込んで雪を取り除く⑤屋内で使用する――ことが事故を招く「5つのNG行動」として、決してしないよう注意喚起する。自分は大丈夫と過信せず、基本の安全作業を励行しよう。
除雪機ばかりではない。雪下ろし中の転落事故にも注意が必要だ。21年1月には、北海道余市町の70代の農家男性が犠牲となった。倉庫の軒先付近で、雪に埋もれた状態で発見された。地元消防によると、屋根からの転落事故とみられる。雪による死者の多くは、屋根の雪下ろしや除雪機を使った作業中の事故だ。
屋根からの転落事故が頻発する山形県では、毎年1月上旬からの1カ月間を「雪害事故防止強化月間」と定め、県民に安全な雪下ろしを呼びかけている。県は「安全な雪下ろし作業『8つのポイント』」を作成し、ヘルメットを装着した上で①作業は2人以上で周囲にも注意する②はしごはしっかり固定する③命綱を使う④順序を守って、足場は特に注意――などを呼びかける。同県では過去5年間で除雪事故による死傷者が、高齢者を中心に計498人に上ることから「高齢者は自らの体力を過信しがち。油断は禁物」と注意を促している。
除雪は、危険と隣り合わせだ。雪に埋もれた時に助けを求める携帯電話をポケットに入れ、安全対策を徹底しよう。