[論説]今こそ集落営農 農地維持評価し支援を
農水省は、米・麦・大豆の土地利用型作物の見通しを示し、2020年に60万あった経営体は、10年後の30年には27万に半減すると予測した。生産者の年齢が高く、小規模・兼業を中心にリタイアが増える一方、新規の参入が少ないためだ。これにより、面積も20年の216万ヘクタールから30年に142万ヘクタールへと大幅に縮小する恐れがあるという。
全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)は生産者の減少に伴って、30年代には米の国内需要量を国産で賄えなくなる恐れがあるとの独自予測を発表、一石を投じた。主食の米ですら、食料安全保障の危機が迫る。国民の食を守るため、生産基盤の「人」と「農地」「技術」を守ることを最優先課題とし、有効な対策を今、しっかりと構築する必要がある。
同省は「人」と「農地」の減少予測に対し、農地の集積・集約、大区画化やスマート農業の普及などを進めるとの基本方針を示し、担い手の農地利用を広げていく考えだ。担い手に、より多くの農地を守り、活用してもらうため、政策支援を充実させていくことが重要となる。
一方で、担い手だけで農地を守るのには限界がある。引き受ける農地が分散し、「これ以上、農地を頼まれても難しい」との声が、多くの担い手から聞かれる。農地を団地的にまとめることができれば、現状より引き受ける余地は広がるが、調整は一足飛びにいかない。中山間地域などは物理的に規模拡大が難しい。
農家が減るから、担い手の規模拡大を進めるというのは現実的な対応策ではあるが、農家の減少自体をできるだけ抑えることこそ力を入れるべきだ。担い手と小規模・兼業農家など多様な人材の力を合わせ、集落を挙げて農地を守っていく体制を、引き続き確保していく必要がある。
集落営農は、07年度の品目横断的経営安定対策(水田・畑作経営所得安定対策)の導入をきっかけに設立が進み、17年には組織数が1万5000を上回ったが、24年には1万4000を割り込んだ。メンバーの高齢化などで解散や合併が進み、カバーする農地面積も最も多かった11年の49万9928ヘクタールから、24年は46万7005ヘクタールに減少した。
今こそ、集落営農へのてこ入れが急務だ。農地を守る役割を改めて評価し、政策支援の充実・強化を求めたい。